日本人は特徴的な体質を持っていることが、よく言われます。体が冷えやすいこと、血流が弱いこと、血管が老化しやすいことが欧米人と比較して指摘されていますが、これらのことは間接的には頭皮に影響を与えて、毛髪の成長にも関係してくることです。
欧米人との比較だけではなくて、同じアジア人と比較しても中国や韓国の方とも異なった体質となっています。その体質の違いは、歴史的に食べてきたものが大きく関係しています。
日本人は今でこそ世界に誇る長寿となっていますが、日本人の平均寿命が50歳に達したのは今から80年ほど前の終戦後です。それまでは40歳台でした。
それが一気に世界のトップまで駆け上がったのは食事内容の変化であり、中でも大きく影響したのは肉食です。日本人の死亡原因は、がんに次いで心疾患、老衰、脳血管疾患、肺炎となっています。老衰と肺炎が上位であるのは高齢化が関係しています。心疾患(心臓疾患)と脳血管疾患は、どちらも動脈硬化が引き金となっていて、動脈硬化の影響が、どちらに先に出たかということです。
以前から心疾患と脳血管疾患は多いのですが、終戦直後はコレステロールの摂取量が少ないために血管が切れて亡くなる人が多くなっていました。それに対して、今では肉食によるコレステロールの摂取量が多いことで動脈硬化になり、血管が詰まって亡くなる人が増えています。同じ病名であっても、理由が逆になっているのです。
同じだけの肉を食べても日本人は動脈硬化のリスクが高くなっています。というのは、日本人は欧米人や北方のアジア人に比べると血液の温度が低くて、脂肪が固まりやすく、それが影響して血流が悪くなります。太い血管だけでなく、頭皮につながる毛細血管も流れが悪くなりやすいのです。
欧米人や北方アジア人は肉食の歴史が長くて、脂肪を燃焼させる能力が高くなっています。そのために体温が上昇しやすくて、血液の温度も高くなっています。
日本人の血液の温度は37〜38℃ですが、羊は約44℃、牛と豚は約40℃、鶏は約42℃の血液温度となっています。これらの動物の肉に含まれる飽和脂肪酸は高めの温度の血液の中で溶けていて、それよりも温度が低い人間の血液の中では固まりやすくなります。
日本人は飽和脂肪酸が血液中で固まりやすいのに対して、血液の温度が1℃ほど高めの欧米人や北方アジア人は動物の血液の温度に近いことから、日本人よりも飽和脂肪酸が固まりにくくなっています。
日本人は肉食のおかげで血管が丈夫になり、免疫も高まってきたものの、肉食を増やすと脂肪による健康被害が出やすく、血液の粘度が高くなって血流も低下しやすいのです。
そのために、血液によって細胞に送られる酸素や栄養素の供給が低下して、細胞から排出される二酸化炭素や老廃物の除去が遅れるようになります。特に血流が低下しやすい頭皮は、大きな影響が与えられることになります。
ちなみに魚は棲息する環境によって体温が変化する変温動物で、水温に合わせて血液の温度が変化して、温かい環境でも冷たい環境でも生き延びることができます。少なくとも水の中で暮らしているので、人間の血液温度よりも低いのは当然のことです。
その低い温度の中で溶けている不飽和脂肪酸なので、それよりも温かな人間の血液の中でも、さらに溶けやすくなり、いわゆる血液サラサラにしてくれるわけです。
毛細血管という名前から、髪の毛の太さがあると勘違いされがちですが、髪の毛の太さは平均で0.08mmです。毛細血管の直径は8μm(マイクロメートル)で、1000分の8mm(ミリメートル)でしかありません。毛細血管を他のものにたとえるとクモの糸の太さです。
血管の中を流れる赤血球の直径は8〜10μmで、毛細血管よりも大きな赤血球の場合には、扁平して通過していきます。赤血球は一つずつなら毛細血管を通過していくことができるのですが、血液中の脂肪が多くなると赤血球がくっつくようになり、通過できなくなります。そのために酸素が充分に届けられなくなっていきます。
血液の流れをよくして、頭皮に栄養と酸素を運ぶためには、脂肪の摂りすぎはいけないということを理解して、毛髪のためにすることは数々あっても、まずは食事の内容を見直してほしいのです。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕