毛髪の科学16 呼吸法で毛髪が生えるというのは本当か

ロングブレスは、俳優の美木良介さんが開発した丹田を意識して強く長く息を吐く健康法で、2011年に初登場したときにはダイエット法で、ロングブレスダイエットとして広まりました。

それが今では「髪の毛が生える」として再燃して、さらに2019年にはインナーマッスルを鍛えて介護予防にもつながるというので、人気が高まってきています。

気になる毛髪の効果については後半で説明するとして、実際のやり方とダイエット、インナーマッスルのほうの効果を先に紹介します。ロングブレスダイエットは、鼻から大きく息を吸い込んで、口から勢いよく吐き出すのですが、ただ息を吐くのではなく、おなかをへこませて腹部の筋肉を使って一気に吐き出します。

これによって、血流もよくなり、次に息を吸ったときに多くの酸素が取り込まれ、これが赤血球によって全身に運ばれていきます。全身の細胞にはミトコンドリアという酸素と脂肪を使ってエネルギーを作り出す小器官があり、ここで多くの酸素が使われて、脂肪の代謝が高まると説明されています。

小器官というと小さな効果しかないようにイメージされるかもしれませんが、一つの細胞に100〜3000個もあり、筋肉では特に数が多くなっています。全身のミトコンドリアを集めると細胞の重量の10%ほどにもなり、体重が60kgの人は6kgもミトコンドリアがあることになります。

ミトコンドリアは運動で体に負荷がかかったり、多くの酸素を取り込んでいると数が増えていくという特徴があり、ロングブレスのよって脂肪の燃焼効率を高めていくことができるようになるということです。

インナーマッスルは体の深いところにある筋肉の総称で、インナーマッスルという名前の筋肉があるわけではありません。姿勢を保つ体幹の筋肉で、一般的な腹筋運動では鍛えることができません。腹筋運動で鍛えられるのは腹直筋、腹横筋などの表側の筋肉で、インナーマッスルを鍛えると腹部が引っ込み、腹式呼吸で酸素を多く取り込むことができるようになります。

3秒間で鼻から息を吸い、腹部をへこませながら10秒をかけて口から吐き出すということを10回ほど繰り返します。何回やったら効果があるというよりも、ロングブレスを行っていると徐々に体が温まってきます。これはミトコンドリアでの脂肪燃焼が高まってきている証拠とされます。
ロングブレスによる発毛は、血流がよくなることと関係しています。

ストレスを抱えていると呼吸が浅くなることが知られています。呼吸が浅くなると肺に入ってくる酸素の量が少なくなります。ストレスがかかっているときには自律神経の交感神経の働きが盛んになり、その結果として血圧の上昇、呼吸数と心拍数の増加が起こります。

ストレスを抱えたまま睡眠すると、寝ている間の呼吸も浅くなり、体に入ってくる酸素も少なくなります。毛髪を成長させる毛母細胞も他の細胞と同じようにエネルギー源と酸素が必要です。

毛髪は1日中、同じように成長しているわけではなくて、夜の10時から深夜の2時くらいまでの間に成長します。特に成長速度が早いのは深夜の0〜2時の間で、この時間帯には成長ホルモンが多く分泌されています。

毛髪も成長ホルモンを使って成長しているということですが、ロングブレスによってストレスが解消されることが毛髪の成長を促しているということになります。このことからすると、ロングブレスは寝る前に行うのが毛髪の発毛に役立つということになります。

毛髪の成長にはビタミンとミネラルも必要で、血流がよいということは、毛母細胞に運ばれるビタミン、ミネラルも多くなるということです。血流の促進がロングブレスの効果ということになると、体内に多くの栄養素が取り込まれるのは食事のときです。

食事の直後は胃の中に食べたものが詰まっている状態なので運動には向かない時間帯です。また、食事で摂ったビタミン、ミネラルは肝臓で活性化されてから全身で使われるので、食事と食事の間の時間帯、次の食事の時間が近づいてきて、胃が楽になってきてから始めればよいのです。

ちなみに、食事で摂った糖質が胃で完全に消化されるのには2時間、たんぱく質は4時間、脂質(脂肪)は6時間となっています。食事から2時間もたてばロングブレスをしてよい時間帯ということになります。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕