毛髪の科学2 髪によい食品の効果

薄毛に気づくのは、鏡にうつった自分の姿よりもヘアブラシについた抜け毛の数や枕カバーについている数だったという人が少なくありません。毛髪の本数は個人差があり、7万本から14万本と開きはあるのですが、平均すると日本人の場合は約10万本だといわれています。

毛髪が抜けたあとに毛母細胞の分裂によって生えてきて、次に抜けるまでのヘアサイクルは4〜6年となっています。毛髪の成長は1日に0.3〜0.4mmで、1か月で約1cmの長さとなります。正常なヘアサイクルなら1日に50〜100本が抜けています。

この状態なら、毛髪が減っていくことはないわけです。ところが、1日の自然な抜け毛が1日に120本を超えると、補充が間に合わなくなって、だんだんと薄く見えるようになっていきます。

毛髪が多ければ濃くて、少なければ薄いのかというと、そのようなことはありません。気になる部分である前頭部や前頂部の密度が問題で、平均的には1㎡に約150本となっています。この気になる部分の密度が低ければ、全体の本数は同じであっても、見え方が随分と違ってきます。

毛髪は太さにも個人差があって、1本ずつが太ければ、それだけ全体的に髪の毛が多いように見えます。日本人の毛髪の太さは50〜100μmとなっています。1μm(マイクロメートル)は1000分の1mmのサイズです。

毛髪が直毛だと細く、波状毛や縮れ毛だと太くなる傾向があります。これは断面が関係しています。直毛の断面は丸型であるのに対して、波状毛と縮れ毛の断面は楕円形になっています。毛髪が波打っていると頭皮が見えにくくなり、本数の割には髪の毛が濃いように感じます。

毛髪は、通常は1つの毛穴から2〜3本の毛髪が生えていますが、毛髪の付け根の毛母細胞の分裂が遅くなると毛穴から出ている部分が短くなって、本数が減ったように見えます。

日本人の毛髪の本数は10万本であるのに対して欧米人(白人)は約15万本と1.5倍もの本数になっています。しかし、日本人の毛髪は欧米の1.5倍の太さがあり、この割合からいうと日本人も欧米人も同じような髪の毛の濃さに見えるはずです。

金髪は黒髪よりも薄く見えがちですが、欧米人は男性ホルモンの分泌量が多いことから、毛母細胞の毛乳頭細胞に影響を与えて、毛母細胞の成長を抑制するDHT(デヒドロテストステロン)を増やすことから、どうしても薄毛になりやすい傾向があります。

日本人のほうが薄毛になりにくい体質ではあるものの、それを超えて薄毛が気になる場合には、毛髪に影響を与える栄養面についても注意が必要です。

髪の毛を濃くするためには、昔から海藻を食べればよいと言われています。海藻に毛髪の成長を促す成分が含まれているように思われがちですが、海藻に含まれるカルシウムやヨウ素などのミネラルは毛髪の成分の一部ではあっても、多く摂ればとるほど毛髪に送られるわけではありません。

体内に取り込まれたミネラルは、全身の細胞で使われ、余ったものの一部が毛母細胞まで運ばれていきます。ほんのわずかな量しか届けられないため、海藻を多く食べたからといって、それは毛髪の成長や髪質に影響を与えるようなことはありません。

昆布やワカメ、ひじきといった黒い色が毛髪をイメージさせたことから、言われるようになった迷信と考えたほうがよいというのが一般的な回答です。

しかし、海藻に含まれるミネラルの中で、一つだけ毛髪の成長に影響を与えるものがあります。それは亜鉛です。亜鉛といえばカキ(牡蠣)やうなぎの蒲焼、レバーなどに多く含まれていますが、海藻にも多く含まれています。

先ほど触れた毛母細胞の成長を抑制するDHT(デヒドロテストステロン)の働きを抑制する作用が亜鉛には認められています。亜鉛は、新しい細胞が作られるところで必要なミネラルで、多く摂ることによって毛母細胞の働きが抑制されにくくなるので、毛髪の成長にも影響します。

この他には、骨の成長、肝臓や腎臓の再生、膵臓のインスリン分泌、舌で味覚を感じる味蕾の再生、そして睾丸での精子の製造にも亜鉛は必要となります。俗な言い方かもしれませんが、髪の毛を増やすためにも役立つ亜鉛は、精子を増やして男性機能を高めることにも役立つということになります。

亜鉛は吸収率が30%ほどとあまり高くはなく、排出もされやすくなっています。食物繊維と大豆や穀類に含まれるフィチン酸には吸収率を阻害する作用があります。亜鉛は汗や尿から排出されやすくなっていますが、アルコールには亜鉛の排出を進める作用があるので、飲酒量にも注意が必要となります。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕