毛髪の健康のためには、普段からの健康的な生活が大切だと言われます。暴飲暴食、運動不足、寝不足、ストレスがかかる生活は毛髪によいわけがないことは普通に考えてもわかることです。
少しでも健康的な生活を過ごしたいと考えている人が、簡単にできる健康法として取り入れていることの一つに糖質制限があります。
糖質制限は、食事に含まれる糖質を減らすだけで、普通なら健康にはよくないと考えられる肉食も、減らすことなく食べても健康が維持できるというので、飛びつく人が多いのもわかります。
糖質は多くの食品に含まれていますが、最も多く含まれるのは主食のご飯、麺類、パンなどで、ご飯の場合は全エネルギー量のうち約77%は糖質となっています。麺類では中華麺を例にすると約28%、食パンでは約37%が糖質となっています。同じだけの分量を食べたとすると、ご飯は食パンの2倍近くも糖質を摂ることになります。
なぜ糖質制限が健康によいのかということですが、初めて紹介されたときは「糖質制限ダイエット」としてで、糖尿病の人に糖質を制限することによって血糖値を下げる効果があることが裏付けとされました。
食品の糖質にはブドウ糖が含まれています。ブドウ糖は1個の分子の単糖で、ブドウ糖1個と果糖1個が結びついたものは蔗糖(しょとう)と呼ばれます。一般に言われる砂糖のことで、甘い砂糖は半分がブドウ糖ということになります。
ブドウ糖が数多く鎖状に結びついたものがでんぷん(澱粉)で、でんぷんは消化酵素によってブドウ糖に分解されます。ということは、ご飯や麺類、パンなどに多く含まれるでんぷんが完全に分解されると、同じ分量の砂糖よりも多くのブドウ糖を摂ることになります。
全身のエネルギー源というと、糖質(ブドウ糖)、脂質(脂肪酸)、たんぱく質(アミノ酸)ですが、ブドウ糖は全身の細胞に素早く取り込まれて、すぐにエネルギーとなります。細胞にブドウ糖を取り込むためには、インスリンというホルモンが必要になります。
糖質を摂ることによって血液中のブドウ糖が多くなると、これをキャッチした脳から指令が出て、膵臓からインスリンが分泌されます。インスリンによってブドウ糖が細胞に取り込まれると血糖値が下がるわけですが、血糖値が上昇するほどインスリンが多く分泌されるようになります。
インスリンにはブドウ糖を細胞に取り込む働きのほかに、もう一つ重要な働きがあります。それは肝臓の中で中性脂肪を合成することです。ブドウ糖はインスリンによって肝臓の中で脂肪酸に合成されて、その後に脂肪酸3個が結びついて中性脂肪となります。
脂肪をほとんど摂らないような食生活をしていても、糖質を摂っていると中性脂肪が増えるということですが、中性脂肪は蓄積型の脂肪で、脂肪細胞の中に蓄積されていきます。
これは糖質を摂ることによって太る仕組みで、その逆のことをしようとするのが糖質制限ということになります。
糖質制限をすることで太らないようになるだけでなく、血液中の中性脂肪が減ることによって動脈硬化のリスクを減らすこともできます。
脂肪細胞に蓄積される中性脂肪が増えすぎると、脂肪細胞からアディポサイトカインという生理活性物質が多く分泌されるようになります。
アディポサイトカインが多く分泌されるほど太った状態はメタボリックシンドロームと呼ばれます。
アディポサイトカインには血圧や血糖値を上昇させる作用や、血管を詰まらせる血栓を作る作用があるので、糖質制限によって太らないようにすることは、生活習慣病の予防につながるということです。
糖質制限は健康によいとしても、強い空腹を感じてしまい、続かないという人も多くいます。ブドウ糖は脳の空腹と満腹を調整していて、ブドウ糖の量が多くなると満腹中枢が刺激されて食欲がなくなります。
それとは逆にブドウ糖の量が少なくなると摂食中枢が刺激されて空腹を感じて、ブドウ糖を欲するようになります。このような反応があるのは、ブドウ糖が脳の唯一のエネルギー源となっているからです。
脳細胞にはブドウ糖しか通過できないので、全身の働きをコントロールしている脳の機能を維持するために、ブドウ糖が減ってくると飢餓状態を感じさせて、食べ物を欲しがるようにしているのです。
空腹を感じるほどの糖質制限は、体によいどころか、かえって体には悪い結果になります。どれくらいの糖質が必要かというと、1時間に約4gとされているので、1日24時間では100gほどは最低限必要となります。
このうち脳だけで80gは使われています。臓器や筋肉の働きを正常に保つためには20gは必要ということですが、ブドウ糖100gは、ご飯の量では茶碗2杯分に当たります。
ブドウ糖は全身に平等に届けられるわけではなくて、最優先される脳、内臓などから順番に使われていきます。ブドウ糖不足の状態になると生命維持に必要ではないところからカットされていきます。
一番初めにカットされるのは生殖に関わる器官とされていますが、それに次ぐと考えられているのが毛髪です。毛髪も毛根の細胞はエネルギー源としてブドウ糖が使われています。毛髪に影響が出るのは毛髪が抜けて、再生が遅れたとしても生命の維持には関係がないからです。
そんなことにならないように、少なくとも1日にご飯なら2杯、食パンなら5枚切り2枚、麺類なら1玉の3分の2くらいは食べる必要があるということです。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕