毛髪の科学30 飲酒と薄毛の関係性を科学する

適度な飲酒は血行をよくしてくれます。毛髪の育成には血流がよくて、栄養成分が多く送られてくることが大切なので、適度な飲酒量で抑えられるなら、お酒を飲むことは薄毛対策には効果があることになります。

適度な飲酒量というのは、日本酒換算で1合の量を指しています。この量なら、ほろ酔い状態になり、自律神経の副交感神経の働きが盛んになって、心身ともにリラックした状態になって、血管の緊張も緩んでいます。そのために血流がよくなっていくわけです。

日本酒換算というのは日本酒と同じだけのアルコールを飲むことを指していて、この場合の日本酒はアルコール度数が15度(15%アルコール)となっています。

アルコールの摂取量は純アルコール(100%アルコール)で20gを基準としています。日本酒なら1合(180ml)になり、ビール(15度)なら中ビン1本(500ml)、ウイスキー(43度)ならダブル1杯(60ml)、焼酎(25度)なら0.6合(110ml)、ワイン(14度)なら4分の1ビン(約180ml)が目安となります。

飲酒量と血圧の関係を見てみると、日本酒で1合の飲酒なら血圧が下がり、2合の飲酒量で元の状態に戻り、3合を越えると血圧が上がるようになります。これは飲酒によって緩んだ血管が、飲酒量が多くなって逆に収縮したわけではありません。

アルコールが血液中に入ってくると血管は緩みます。適度に緩んだときには血流がよくなりますが、緩みすぎると血圧が低下して、逆に血流が低下してしまいます。そのために飲酒量が増えると血圧を高めて、血流を一定に保つようにしているのです。

毛髪の発育のためには、できることなら日本酒換算で1合までの飲酒に止めておくべきで、多めに飲むようなときでも2合までにしておいたほうがよいということです。

毛髪に影響するのはアルコールだけでなく、アルコールから変化したアセトアルデヒドのほうがより強い影響を与えます。アルコールは肝臓にあるアルコール脱水素酵素の働きによってアセトアルデヒドという物質に変わります。

アセトアルデヒドは飲酒で顔が赤くなったり、動悸や頭痛の原因物質で、アセトアルデヒドが多くなるほど二日酔いが起こりやすくなります。アセトアルデヒドはアルデヒド脱水素酵素によって分解されて酢酸になって無毒化され、最終的には炭酸ガスと水になります。

日本人はアルデヒド脱水素酵素の働きが弱く、このことが悪酔いしやすく、二日酔いしやすい原因となっています。アセトアルデヒドが分解されるときには、肝臓でアミノ酸やミネラルが多く使われます。

また、毛髪に必要なアミノ酸のシステインやメチオニンはアセトアルデヒドによって減少することから、飲酒によって、これらの毛髪に必要な栄養成分が減少してしまうことになります。

いわゆる酒に強い人は、アルデヒド脱水素酵素の働きがよいとされますが、それでも欧米人と比べるとアルデヒド脱水素酵素は少ないので、どうしても毛髪に影響が出ることになります。

飲酒をすると頭皮の皮脂が増えやすく、飲酒後には頭皮や毛髪がベタついたり、かゆみがあるという人は、皮脂が毛髪の育成に影響を与えやすいので、飲酒量を減らすことが薄毛対策になるということです。

飲酒後にラーメンを食べたくなるという人は少なくありません。締めのラーメンが糖質(炭水化物)と脂質(脂肪)を多く取り入れることになり、血液をドロドロにさせるために頭皮の毛細血管への血流が低下することによって、薄毛の原因になることが指摘されています。

飲酒後にラーメンが食べたくなるのは、ラーメンの素材に含まれるミネラルなどの栄養成分が飲酒後には不足するので、これを補うための衝動だと説明されることもありますが、これは血糖値の低下と関係があります。お酒を飲むことで上昇した血糖値が急激に下がるために、多くの量を食べていたとしても空腹を感じてしまうからです。

アルコールは肝臓でグリコーゲンを分解して血液中のブドウ糖の量を増やします。そのために飲酒をすると血糖値が一時的に上昇します。血糖値が上昇すると膵臓からインスリンという血糖値を下げる作用があるホルモンも分泌されます。インスリンが多く分泌されると血糖値が急激に下がります。

満腹と空腹の感覚は脳の中枢で血液中のブドウ糖の量によって判断しています。そのため、急激に血糖値が下がると空腹を感じて、帰宅途中にラーメン屋があると立ち寄ってしまうということになります。

この状態が起こるのは飲酒量が日本酒換算で3合を超えた場合です。多くの量を飲むほど、空腹を感じやすくなり、ラーメン屋があいていなければコンビニに寄ってしまうことになるのです。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕