白髪が目立ってきたときには、二つの選択が迫られます。白髪を隠さずに何もしないか、それとも白髪を染めて黒くするか、です。白髪になるとハゲないと言われる一方で、部分的に白髪があると毛髪が薄く見えるということもあって、白髪のままでいるのは薄毛傾向にある人にとっては勇気が必要なことかもしれません。
とはいっても、白髪を染めることについては、抵抗感がある人は少なくありません。というのは、「白髪を染めると白髪が増える」と昔から言われているからです。
染める回数が増えたり、染める範囲が増えた分だけ白髪が広がっていくわけではないものの、染めたことによって白髪が増えるようなことになってはいけないと考えて、躊躇する人がいるのは当たり前かもしれません。
白髪染めと白髪の関係について考えていく前に、まずは白髪になる仕組みについてみていくことにします。毛髪は透明なパイプのようなもので、パイプの中に黒い色素が詰まっていれば光を吸収して黒く見えるようになります。
黒い色素が少なくなってくると黒色から茶色、黄色に向かって変化していき、色素が抜けてしまうと光を反射して白く見えるようになります。
毛髪の根元には毛母細胞があって、ここで毛髪が作られています。毛髪が作られるときには黒色の色素のメラニンが内部に取り込まれて、毛髪が黒くなります。
日本人は黒髪の人が圧倒的に多いのは、黒色に見えるメラニンが多いからです。メラニンには種類があって、日本人は赤褐色のユウメラニン(真メラニン)が多く、欧米人は黄赤色のフェオメラニン(亜メラニン)が多くなっています。
そのために欧米人は茶色やブロンド(黄色)の髪となっています。黒髪をブリーチしていくと先にユウメラニンが壊されて赤色からオレンジ色に変化して、さらにブリーチするとユウメラニンがなくなり、フェオメラニンが残ってオレンジ色から黄色に変化していきます。
メラニンはメラノサイトという色素形成細胞によって作られています。年齢を重ねると白髪が増えていくのはメラノサイトの働きが低下して、メラニンの量が減っていくからです。
メラニンが作られなくなるのは加齢だけでなく、親からの遺伝によるメラニンが作られにくい体質、紫外線で毛母細胞がダメージを受けることによるメラノサイトの働きの低下、ストレスによる血行不良でのメラノサイトの働きの低下、食生活の乱れによるメラノサイトの栄養不足などがあげられます。
若いうちから白髪が増える、いわゆる若白髪は、複数の原因によって生じるものだと考えられています。
若白髪でなければ、白髪が目立ってきたときに生活改善をすれば、白髪の進行を遅らせることができるようになると一般には考えられていますが、もう一つの白髪の原因が明らかになってきました。それは活性酸素の発生です。
活性酸素は、通常の酸素のプラスとマイナスの電子のバランスが崩れた酸素で、酸化物質に触れることで多く発生するようになります。活性酸素を発生させるものとしてパーマ剤やカラー剤(白髪染め)などもあげられています。
白髪染めはアルカリ剤が毛髪の表面のキューティクルを開いて染料を毛髪の中に浸透させ、続いて酸化剤がメラニンを分解して、染料を毛髪の内側に定着させます。そのために酸化させるための薬剤が必要となっているのです。
活性酸素の一つの過酸化水素が発生するとメラニンの材料であるチロシンが酸化して、メラノサイトがメラニンを作りにくくなって白髪が増えるようになります。
白髪染めを使えば、少なからず過酸化酸素が発生して、白髪になるのかというと、必ずしもそうではありません。過酸化酸素が発生して白髪につながるのは、毛母細胞がダメージを受けるからです。
白髪染めは毛穴から出ている白髪を根本から染めたいと考えて、しっかりと着色する人がいます。その気持ちはわからないではないのですが、頭皮まで染まってしまうような染め方をすると、毛母細胞の酸化を進めてしまうことになります。
そうはいっても市販の毛染め剤を使って家庭で染めた場合には、家族などに染めてもらったとしても毛髪だけを染めるのはテクニック的に難しいことです。ヘアケアのプロは、白髪染めは美容院で行うことをすすめています。
しかし、料金的な問題もあって、なかなか行けないという人も少なくないはずです。過酸化酸素は揮発させて消去させることができるのですが、市販のカラー剤には揮発成分を使うことが許可されていません。それに対して、美容院で使われるプロ用のカラー剤には揮発成分によって過酸化水素を空中に飛ばすことが許可されています。
白髪染めを使うと白髪が増えると感じている人は、美容院での白髪染めを考えてもよいかもしれません。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕