毛髪の科学37 白髪に関して言われていることを科学する

白髪や薄毛については、まるで都市伝説と思われるようなことが言い伝えられています。その代表的なものが「白髪はハゲない」というものです。白髪になればハゲることはないという意見がある一方で、白髪でも白髪でなくてもハゲる人はハゲるという意見もあって、白髪が増えてきた人に不安を与える結果となっています。

この疑問を解決するには、白髪と薄毛のメカニズムを見ることが近道です。白髪は毛母細胞の色素形成細胞のメラノサイトが関係しています。メラノサイトで作られるメラニンが黒髪のもとで、メラニンが多く作られなくなると毛髪の色が徐々に薄くなっていきます。

そして、メラノサイトでメラニンが作られなくなると、だんだんと色素が抜けて白髪になります。

薄毛のほうは、毛母細胞の活動が遅れるか停止して、毛髪の伸びが遅れたり、伸びなくなって抜け毛のスピードに発育のスピードが間に合わなくなることで起こります。両方ともに毛母細胞が関係しているものの、起こる原因が異なっているので、直接的な関係はありません。

白髪の原因を見ていくと、親からの遺伝が関係していることがわかります。また、薄毛のほうも遺伝が関係しています。白髪にも薄毛にも遺伝が関係していることから、これも関係があるのではないかと考えられがちですが、白髪の場合はメラニンの材料がメラノサイトに送られにくくなるという体質が関係しています。

これに対して薄毛のほうは毛髪の発育に影響する男性ホルモンの分泌が関係しています。同じ遺伝であっても、作用しているところが違っています。

両方の体質が遺伝することも可能性としてはあるものの、その可能性は、ごく少ないはずです。

白髪になるとハゲないと言われるようになったのは、薄毛が進むと白髪が増えてきたとしても白髪となる毛髪が少なくなっているので、ハゲている人は白髪にはならないと見られがちです。

極端な薄毛の人は毛髪の色までは目がいかなくなります。白髪が多くても、白髪よりもハゲのほうが注目されてしまいます。「白髪はハゲない」ではなく、「ハゲている人は白髪が少ない」というのが正解ではないでしょうか。

また、目の錯覚も関係しています。黒髪の場合には頭皮の色との差が大きいので、薄毛になると頭皮が見えてきて、それだけ薄毛が目立つようになります。これに対して白髪の場合には頭皮の色との差が小さいので、白髪で薄毛になってきても目立たないということです。

毛髪は年齢を重ねていけばメラノサイトの能力が低下するので、どうしてもメラニンが作られなくなっていきます。総白髪の人は、ハゲずに毛髪が残ったということで、このことが白髪はハゲないと言われる要因とされているのです。

白髪が増えてきたときの、よくある対処というと、白髪が目立たないように髪型を変える、黒髪で白髪を隠すという消極的な方法から、白髪を黒く染める、白髪を抜くという方法まで、さまざまあります。

白髪の本数が少ないときには目立つところを抜くという方法を取る人が多いかもしれませんが、白髪の本数が増えてくると抜いてばかりはいられません。というのは、「白髪を抜くと白髪が増える」と言われるからです。

これは本当のことなのかということですが、白髪を抜いたあとから元の黒い毛髪が生えてきたら問題はないものの、毛髪の毛母細胞のメラノサイトの状態が同じであれば、メラニンを作り出す力も変わらないので、また生えてくるのは白髪ということになります。

もちろん、毛母細胞の状態が改善されて、メラノサイトが活性化されて、メラニンが増えてきたとしたら黒い毛髪が生えてくる可能性がないわけではありません。しかし、可能性としては低いものと考えられています。

「白髪を抜くと白髪が増える」というのは、白髪を1本抜いたら、そこから生えてくる白髪が2本になるという意味ではありません。もしも抜いたよりも多くの毛髪が生えてくるのだったら、薄毛の人は白髪を抜けば薄毛が解消されることになるわけですが、そんなことはありません。あくまで抜いて次に生えてきたとしても、それは同じだけの本数でしかありません。

白髪を抜くと、他の黒い毛髪が白髪になっていくというのは、たまたま白髪が増えやすい時期で、抜いた部分の周りが遅れて白髪になっていったということです。

白髪が気になって抜くのはわからないではないのですが、抜くことによって毛根を傷つけてしまい、炎症が起こるなどして、毛母細胞の成長に悪影響を与えることがあります。

その悪影響がメラノサイトがメラニンを作り出す能力を低下させて、色素が薄くなるということならまだしも、悪くすると抜いたことによって二度と生えてこないということにもあるので、気になるから抜いてしまえというのはやめたほうがよいということです。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕