“スカルプケア”という言葉を聞くと、頭皮のためのシャンプーを思い浮かべる人が多いかと思います。シャンプーは毛髪と頭皮を洗浄するためのもので、毛髪と頭皮を清潔に保つために使われます。
スカルプケアのためのシャンプーは、もちろん毛髪の洗浄効果はあるものの、頭皮の洗浄に特徴を持たせています。スカルプ(scalp)は頭皮のことで、これをケアするのだから単に洗浄するだけではないことは普通に想像ができます。
では、何をケアするのかというと、それは頭皮の毛穴に詰まった皮脂を取り除いて、毛髪が発育しやすい環境にすることです。
頭皮の毛穴に詰まった皮脂を取り除けば、それでケアが済んだというわけにはいきません。皮脂だけに注目しても、皮脂を減らす方法、皮脂を詰まらせない方法、皮脂を取り除く方法があります。男性は皮脂が詰まりやすくなっています。
男性の皮脂の量は女性の3倍ほどもあります。これは全体的な皮膚でのことで、頭皮は顔の皮膚に比べると2倍以上にもなっています。皮脂は毛穴の内部にある皮脂腺から分泌される皮脂成分で、多く分泌されると毛穴を通って外へと押し出されています。
皮脂の分泌量の男女差に影響しているのは性ホルモンです。分泌量は思春期から成人の間で増えていくのですが、皮脂の分泌を活発にするホルモンはテストステロンとステロイドホルモンの一つのアンドロゲンです。
テストステロンは男性ホルモンで、男性のほうが女性に比べて格段と分泌量が多くなっています。アンドロゲンは身体の男性化を進めるホルモンで、どちらも成長期の男性で分泌量が多くなっています。
そのため、女性は20歳をピークにして皮脂の分泌量が減っていくのに対して、男性は20〜40歳がピークで、その後も皮脂の分泌量が大きく減ることはありません。
頭皮の皮脂は悪者扱いされてしまいますが、そもそも頭皮の皮脂には頭皮を守る大切な役割があります。毛穴の中から皮膚の表面に出てきた皮脂は、汗と混ざり合うことで皮脂膜になります。この皮脂膜が頭皮を覆うことによって、汚れやほこり、紫外線などの外部からの刺激から頭皮を守ってくれます。
頭皮は適度な水分があることで正常に保たれていますが、皮脂膜があると水分の蒸発が防がれて、頭皮の状態がよくなります。男性は女性に比べて皮膚の水分量が半分ほどと少なく、頭皮の水分量も少なくなっています。
また、皮膚は弱酸性に保たれることによって雑菌が繁殖しにくくなります。皮膚の酸性度はpH4.5から6くらいの弱酸性となっていて、この状態では殺菌作用が強くなります。
頭皮も同様ですが、年齢が進むと酸性度が低下していって中性に近づいていきます。pH6を超えると殺菌作用も弱まりから皮膚が荒れやすくなります。
このように皮脂には皮脂膜を作って皮膚の状態をよくする働きがあるわけですが、その皮脂が酸化すると今度はよくないことが起こります。
皮脂が多く分泌されて、皮膚の近くの古い角質(タンパク質)と混ざり合うと角栓となります。角栓様物質とも呼ばれていて、皮脂が固まって栓のようになって毛穴をふさいでしまいます。
角栓は皮脂が多いところでできやすいので、最も多いのは頭皮です。男性は皮脂が女性の3倍もあるので、角栓ができる確率も当然のように高まります。
角質ができるのは皮脂の分泌量だけではありません。皮脂が酸化して過酸化脂質になると固まりやすくなって、短期間で硬い角栓が作られるようになります。頭皮の酸化の原因として一番に考えられるのは紫外線による活性酸素の発生です。
頭皮は太陽光の紫外線を受けやすくて、皮脂が紫外線によって直接的に酸化させられるので、角栓が作られやすくなります。この他にも喫煙や飲酒、農薬や食品添加物、化学物質、ストレスなどによって体内での活性酸素が増えると酸化した状態の皮脂が増えていくこともあります。
角栓は、ワインのコルク栓のように詰まっているので、これを抜いてあげればよいわけです。そのためには頭皮を動かしてあげることが必要で、頭皮マッサージが効果的です。頭皮マッサージというと、揉む方法と叩く方法(タッピング)があります。
養毛剤をつけたときにはトントンと指先で叩くようにして血流を促進させたり浸透させる方法もあるのですが、角栓を抜くとなると頭皮を揉むようにして押し出すのが一番の方法となります。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕