毛髪のケアのために使われる成分というと目新しいものが注目されがちですが、以前からあるものへの注目も始まっています。その注目されているものは“カフェイン”です。
カフェイン入りのシャンプー、コンディショナー、トリートメントが登場していて、さらにカフェインの入った飲料も毛髪ケアに効果があるとして人気が高まっています。
その効果として発表されているのは、血流促進、抗酸化、男性型脱毛症の予防です。
カフェインは、天然由来の有機化合物で、コーヒーや緑茶、紅茶、ココア、チョコレートなどに多く含まれています。カフェインが多く含まれるコーヒーや緑茶は眠気覚ましによいことから覚醒作用は広く知られています。他にストレス緩和や血管拡張作用があって、血管拡張によって血流がよくなることで体温が高まりやすくなっています。
頭皮の血流は毛髪の成育には重要なことで、血流が促進されることで毛細血管の流れがよくなり、毛細血管の端にある毛母細胞にも血液が多く送られていきます。血液が運んでいる酸素と栄養素が毛髪の生育には必要で、これが第一のカフェインの発毛の効果といえます。
血液の流れは血液がサラサラの状態で保たれています。血液が酸化した状態になるとドロドロ状態になりやすいのですが、その原因となっているのは活性酸素の存在です。
通常の酸素はプラスの電子4つとマイナスの電子4つがバランスの取れた状態になっています。活性酸素はマイナスの電子が一つ欠けた状態となっていて、欠けた電子を他のものから奪います。この電子を奪われた結果が酸化で、活性酸素を元の状態に戻してくれるのが抗酸化成分です。
コーヒーにはクロロゲン酸というポリフェノールが含まれていますが、この抗酸化成分の働きはカフェインによって高められるとされています。カフェインには自律神経の交感神経の働きを高める作用があり、交感神経によって活性化した全身の細胞が抗酸化成分を取り込んで、その働きを高めると考えられています。
もう一つの効果が実は重要で、男性型脱毛症(AGA)の抑制作用が認められています。男性ホルモンのテストステロンがジヒドロテストステロン(DHT)に変化するときに作用しているのが5αリダクターゼという酵素です。DHTは毛母細胞に栄養を送る毛乳頭細胞の男性ホルモン受容体に取り込まれて、毛母細胞の働きを低下させます。カフェインには5αリダクターゼの働きを抑制する作用があり、そのためにDHTが作られにくくなって、毛乳頭細胞の働きが正常に保たれるというわけです。
ジヒドロテストステロンは尿とともに排出されます。利尿作用のあるお茶を多く飲むことによって、作られたジヒドロテストステロンを減らすこともできるということです。
こういったカフェインの働きを期待して、毛髪ケアのシャンプーなどにカフェインが使われているわけですが、カフェインは飲んで体の中から作用させることで、より効果が高められます。もちろん、シャンプーなどに使われているカフェインを口から入れるということではなくて、お茶などから取り入れるようにします。
飲料の中でカフェインが豊富に含まれるのは、緑茶の中でも濃い玉露で、100mlあたり160mgとなっています。他のお茶では煎茶、ほうじ茶、ウーロン茶が20mg、玄米茶が10mgとなっています。同じ量でコーヒーなら60mg、紅茶が30mgと、日常的にカフェインを取り入れるのに適した飲み物となっています。
こういったことを知ると、カフェインが多く含まれる飲料を多く飲んで、できるだけ早く好結果を得たいと考えるところですが、カフェインが毛髪に好結果を与えるまでには3か月間はかかるとされています。そのため、少ない量でも構わないので、毎日飲み続けることが大切になります。
カフェインにはメリットがある反面、デメリットもあります。それはカフェインそのものの悪影響ということではなくて、摂りすぎによる結果です。覚醒作用があるということは、それが強くなると目が覚めてしまい、眠りたいときに寝つけないことになります。
カフェインの摂りすぎによって亜鉛の吸収が妨げられるという報告もあります。亜鉛は細胞分裂に必要なミネラルで、毛髪のように細胞分裂が盛んなところには特に多く必要になります。その量が不足すると、抜けたあとの毛髪が成長する重要なところで生えにくくなるという困った結果にも結びつきます。
これは毛髪の生育と間接的な関わりになるかもしれませんが、カフェインによって交感神経の働きが盛んになりすぎると、胃と腸の働きが低下します。胃液の分泌、腸からの吸収、腸の蠕動運動は副交感神経が調整しています。その逆の働きをするのが交感神経で、胃液が減って消化力が下がり、腸からの吸収が低下します。そのために毛髪に必要な栄養素の取り込みが減ることになります。
腸の蠕動運動が低下すると、大腸の通過が悪くなり、便通が遅れがちになります。大腸に棲息する腸内細菌の悪玉菌は毒素(有害物質)を作り出しますが、大腸から水分が吸収されるときに毒素も吸収されます。毒素は肝臓で分解されるものの、毒素が多くなりすぎると分解が間に合わず、再び血管に運ばれます。
便秘をすると肌荒れするというのは毒素が多く血液とともに運ばれている証拠で、そのときには毛母細胞にも毒素が運ばれています。その結果として、毛母細胞の働きも低下することになるので、交感神経の働きすぎには注意しなければならないということです。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕