毛髪の科学45 塩シャンプーの威力

ヘアケア法として「塩シャンプー」の人気が高まっています。塩シャンプーは、その名のとおり、塩でシャンプーする方法です。

塩というと一般には多く出回っている精製塩を指します。これは通常は食塩と呼ばれているもので、精製された純度が高い塩で、輸入された原塩を溶解させて精製したものは塩化ナトリウムが99.5%以上のものと、海水から成分を濃縮した塩化ナトリウムが99%以上のものがあります。どちらにしてもサラサラの状態になっています。

これに対して天然塩は岩塩や海水などから取られた塩化ナトリウムのほかに塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化カリウムなどのミネラルが含まれているもので、海水から作られたものでは塩化ナトリウムの割合は77%ほどとなっています。

塩シャンプーに使用するのは、ミネラルが豊富に含まれている天然塩のほうです。塩シャンプーの始まりは、サーファーに薄毛の人があまりいないことから研究されたと伝わっていますが、塩をシャンプー剤の代わりにして使うと初めのうちはヌルヌル感があって驚かれるということです。

そのために塩シャンプーをすすめられても、途中でやめてします人も少なくないのですが、これは頭皮の状態がよくなっていく段階で初めに起こる誰もが経験することです。東洋医学では身体がよくなるときに悪く感じる症状が起こることを好転反応といいますが、それとは違ってヌルヌルの原因は明らかにされています。それは頭皮に蓄積された皮脂が塩に溶けるようにして出てくるからです。

頭皮に残る皮脂は、皮脂腺が分泌されて、毛穴を通じて外に出てきます。皮脂は古い角質と混ざり合って角栓となって毛穴に詰まっていきます。角栓は塩シャンプーで取り除くことはできますが、角栓の下には皮脂が多く残っています。

この皮脂を取り除くまでには、どうしても1〜2週間ほどはかかります。

頭皮の皮脂は、通常のシャンプーをしたあとでも溶け出てきて表皮に広がります。この皮脂が毛髪に付着して、時間が経つと毛髪がベタつく原因となります。皮脂は夏場には溶けやすく、汗とともに流れ出すことから頭皮に多く残りやすくなります。夏場は頭皮に皮脂が残りやすく、毛髪に移りやすいので、塩シャンプーを始めるのに適した季節だといえます。

塩シャンプーは、天然塩をぬるま湯に溶かすことから始めます。塩の量は洗面器1杯について大さじ1杯が目安です。溶かした塩湯を頭皮にかけていきますが、ただかけ流すだけでなく、少し流しては頭皮を揉むようにして塩の成分を毛穴の中に行き届かせるようにします。

5分ほど浸透させたら、次はリンスとなりますが、一般的なシャンプーのあとのように毛髪をコーティングしなくてもよいので、お湯だけで流すか、酢を入れた手作りリンスを使う方法もあります。

一般的なシャンプー剤には合成界面活性剤が含まれていて、皮脂を洗い流すだけでなく、頭皮のセラミドなどの保湿成分も落としてしまいます。できることならシャンプーをしたら、頭皮ケアとして保湿成分が含まれた乳液などを使うことが望ましいということですが、そのようなことまでしている人はごく少数派です。

塩シャンプーをすることによって皮脂が減って、毛髪の生育がよくなると同時に、塩の効果によって血流もよくなります。このことによって毛髪の根本である毛根に運ばれる栄養成分や酸素が多くなり、このことによって抜け毛が減り、皮脂の分泌も抑えることができるようになります。

一般的なシャンプーを使い続けると、皮脂を多く洗い流してしまうために、頭皮のバリア効果が落ちて、それを補うために皮脂が多く作られすぎるからです。それを塩シャンプーをすることによって落ち着いた状態に戻っていくというわけです。

塩シャンプーの利点としては、このほかにも頭皮の臭いの軽減、白髪の改善などもあげられています。

効果だけでなく、難点も一部には指摘されています。それは染毛したヘアカラーの色が抜けやすくなることと、毛髪の手触りが低下することです。ヘアカラーが落ちやすくなっても、白髪の改善効果も報告されているので、ヘアサイクルが落ち着くまでは染毛の回数が増えるのは仕方がないことかもしれません。手触りのほうは皮脂が少なくなったことが関係しています。これが気になる場合にはリンスを工夫することで解消できます。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕