毛髪の科学47 薄毛と体臭の深い関係

毛髪の臭いは、毛母細胞から生えている毛髪の通り道にあたる毛孔(毛穴)から出てくる皮脂が毛髪に移った結果です。

皮脂は毛孔の中にある皮脂腺から分泌されていますが、男性ホルモンが多いと分泌量が多くなり、酸化しやすくなることから毛穴が詰まりやすくなります。酸化した皮脂は雑菌が繁殖しやすくなり、臭いも強くなっていきます。

男性ホルモンが多く分泌される男性は、毛髪の臭いも強くなりやすいので、頻繁に洗髪しないと毛髪の臭いが強くなってしまうということですが、頭皮も、それ以外の全身の皮膚も構造的には同じなので、毛髪が臭う人は体臭も強いとイメージされがちです。

体臭は、原因によって表面反応由来、皮脂腺由来、血液由来の3つに大きく分けられています。表面反応由来は皮膚に残っている汚れが原因で、皮膚に棲みついている常在菌が剥がれた皮膚や皮脂を分解して臭いを作り出しています。

紫外線を浴びると、さらに臭いが強くなります。皮脂腺由来は毛髪が臭うのと同じで、皮脂の酸化が原因となっています。

血液由来は、血液の中に含まれている臭い成分が皮膚から揮発して臭うもので、一般に言われる体臭は、これが原因となっています。

この臭いは“皮膚ガス”とも呼ばれていて、脂質(脂肪)を材料として体内でエネルギーが作り出されるときに生成されるアセトンが原因となっています。アセトンは飲酒をして寝ているときに体臭が強くなる原因となっている成分として知られています。

アセトンだけでなく、皮膚ガスには、たんぱく質が分解されるときに発生するアンモニアと、腸内細菌の悪玉菌によって大腸で発生するインドールやスカトールという臭い成分も含まれています。

アンモニアは尿から排泄されていますが、いわゆるオシッコ臭いのもとです。インドールやスカトールは、おならに含まれる成分で、「便秘をしていると皮膚からおならの臭いがする」と言われるのは、皮膚ガスのせいです。

大腸で発生する臭い成分は揮発性のために、大腸壁から吸収されて血液中に入ります。そして、血流によって全身に運ばれて、皮膚の近くまで運ばれたものは皮膚ガスとして発散されます。もともとが、おならの成分であったので、悪玉菌が多い状態であったり、便秘が続いたりしたときには皮膚ガスも増えてしまいます。

頭皮には多くの血管が流れているものの、頭頂部は毛細血管が少なくて、血流がよくないので、毛母細胞に運ばれる栄養成分が少なくなっています。ということは、頭皮からは皮膚ガスの発生は少なくて、頭皮や毛髪の臭いと、それ以外の皮膚の臭いとは原因が異なっているということが言えます。

体臭が強い人は腸内細菌の悪玉菌が多いということですが、このことと薄毛に関係性があるのか、ということについて考察することにします。

悪玉菌が多い人は、腸が冷えていることが指摘されます。腸内細菌の悪玉菌は、腸内の温度が高くても低くても増殖する性質があります。善玉菌は温かめの温度で増殖しやすくなっています。ということは、腸内の温度が低くなると、善玉菌が増えにくく、悪玉菌が増えやすくなって、皮膚ガスの原因となっている臭い成分が多く発生するようになります。

腸は体の奥にあっても、血管からみると端になっています。腸は口から肛門まで続いている管のようなものと考えることができます。毛細血管が密集していて、血流によって温度が変化するのは皮膚と同じです。

皮膚が冷えているときには、腸内も冷えています。頭皮の血流が低下して、毛髪の育成に影響が出ているときには、腸内の温度が下がって悪玉菌が増えて、臭い成分が多く作られているということです。

臭い成分が多く作られて、体臭が強くなっていることと、薄毛との間に直接的な関連性がないものの、腸の冷えを通じて、つながりがあるということになります。不快な体臭は加齢臭とも呼ばれていて、体臭が強くなってくるのは歳をとった結果と言われます。年齢を重ねるにつれて毛髪が抜けやすくなり、再生されにくくなってくることから、加齢が一番の原因とされることが多くなっています。

しかし、腸の温度が低くなることが体臭と薄毛の原因であるなら、何歳になっても血流をよくすることで解決が可能になります。血液の温度は民族によって違いはあるものの、日本人の血液温度は37℃ほどです。欧米人や大陸系のアジア人は、歴史的に肉食をしてきたことから脂肪を熱エネルギーにする能力が高くなっています。

それに対して日本人は、血液温度が低いことから、善玉菌を増やす能力も毛髪を生やす能力も低いと言わざるを得ません。だからこそ、できるだけ体を動かして体を温めること、血管を萎縮させるストレスを減らすこと、血液をドロドロにする肉の脂肪を減らして血液をサラサラにする魚の油や植物油を多めに摂るといった工夫をするべきだということです。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕