薄毛に見えるのは、毛髪の本数が少ないだけでなく、それぞれの毛髪が細くなっていることも大きな原因となっています。そのため、薄毛対策というと毛髪が抜けにくいようにすることと同時に、太くする方法も考えたいところですが、これまでの薄毛対策の中では太くする方法というのは、あまりありませんでした。
日本人の毛髪の太さは0.07〜0.15mmで、年齢を重ねると細くなっていきます。太さのピークは男性では10〜20代、女性では10〜30代と、男性のほうが太さのピークを早く迎えて、細くなっていくのも早い傾向があります。
それだけ同じ本数が生えていたとしても男性のほうが地肌が見えるようになり、毛髪も全体的に薄く見えるようになっていくということです。
毛髪の太さに影響するのはコルテックスという毛髪の中間層にある縦繊維の集合体のことで、毛髪の約85%を占めています。毛髪の構造は、よく海苔巻きの三層構造にたとえられています。
一番外側の海苔にあたるのがキューティクルで約10%、中の酢飯にあたるのがコルテックスで約85%、中の具材にあたるのがメデュラで約5%の割合となっています。海苔巻きが細巻きでも太巻きでも、海苔は厚みが同じで、具材もあまり大きさは変わりません。海苔巻きの太さを左右しているのは酢飯の量と考えることができます。
コルテックスは毛皮質と呼ばれるメラニン色素を含んでいる細い繊維状のタンパク質が束になっています。毛髪のしなやかさも、色の黒さもコルテックスが影響をしています。
コルテックスの量は遺伝や体質が大きく影響していて、太くなる遺伝子の持ち主であってもコルテックスの材料となる栄養が不足していたら、せっかくの太くなる体質も活かせなくなります。
材料が足りていても、刺激を与えないとコルテックスは増えないということでマッサージがすすめられていましたが、それでは効果が得られにくく、他にプラスする刺激法について研究がすすめられてきました。その方法として紹介するのは「ガムを噛む」という、これまであまり考えてこなかった誰もが簡単にできる方法だったのです。
研究対象となったのは、毛髪関連の症状を自覚していないロッテ中央研究所の27人(男性21人、女性6人)の研究員です。年齢は24〜51歳で、平均年齢は36.4歳となっています。
自分のところの社員が参加した研究というと、それなりのケアを心がけていることが想定されることから、通常では研究対象にはされていません。しかし、今回の研究はガムを噛むということと、毛髪の太さの関係ということで、あらかじめ毛髪の状態を考えてガムを噛むということがなかったことから、対象としては問題がない状況です。
ただし、これからの研究となると、今回の結果を踏まえて、社員の意識が変わったことも考えられることから、新たな研究対象が必要になるかもしれません。
研究対象者は、これまでの生活の中でのガムの咀嚼時間が多い群と、少ない群に分けて、毛髪径(太さ)を比較しています。咀嚼時間が多い群は平日の回数を調べています。その結果、ガムの咀嚼時間が多い群で毛髪が有意に太くなっているという結果が得られています。
具体的な研究方法としては、1日の平均ガム咀嚼時間が多い(51.1分±13.0分)群の14人(男性11人、女性3人)と、咀嚼時間が少ない(10.0分±6.8分)群の13人(男性10人、女性3人)に分けて、頭頂部、側頭部の毛髪を毛根付近から10本を切り落とし、毛髪の切り口から約1cmのところを計測して、平均値を比較しました。
頭頂部の毛髪径では咀嚼時間が多い群は96.4μm、少ない群は89.2μmでした。側頭部の毛髪径では咀嚼時間が多い群は99.0μm、少ない群は93.4μmと、もともと側頭部のほうが太い傾向があり、頭頂部のほうが差が大きくなっていました。
ちなみにμm(マイクロメートル)は1000分の1mmで、研究者対象者のガムの咀嚼時間が多い群では平均的な太さより少しだけ細いという状態でした。
今回の結果は、これまでのガムの咀嚼習慣と毛髪径についての調査研究で、ガムの咀嚼習慣と毛髪径の因果関係を調べたものではありません。しかし、その可能性があることから、日本抗加齢医学会の専門研究誌「アンチ・エイジング医学」(2021年17巻2号)に論文掲載され、注目を集めています。
研究背景としては、地肌のマッサージによって頭皮の血流量が増えることが確認されていて、頭皮マッサージを24週間行ったことで毛髪径が増加することが確認されていました。また、ガムを咀嚼することで脳の血流や頸動脈の血流が増加することが報告されていて、ガムの咀嚼は頭皮血流にも影響を与えて、毛髪径に影響を与えるとの仮説のもとに調査されたものです。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕