毛髪の科学55 薄毛のシーズンへの先回りケア

薄毛に影響を与えることとして、頭皮の血流の低下、男性ホルモン、栄養不足など、いろいろな原因があげられていますが、よくない条件に、もう一つの悪条件が重なると、それをきっかけにして薄毛が進んでいくことになります。そのきっかけとして、これからの季節に注意しなければならないのは紫外線の影響です。

紫外線の影響を最も強く受けるのは夏場で、その影響によって抜け毛が増えるのは夏の終わりと秋口です。気づくきっかけとなるのは洗髪後の排水口の毛髪の本数や、起床時の枕カバーの毛髪の本数です。

そのために夏場の紫外線がよくないと認識する人が多くて、夏場の外出には帽子をかぶる、強い日差しを避けるという対策をする人も多くなっています。ところが、実際に頭皮にダメージを与えているのは夏場だけではありません。

紫外線の影響を受けているときには、なかなか気づかないのですが、あとあとになってから「そういえば、あのとき」と思い出すことが多いのは春の日差しです。

春の日差しの対策をしておかないと、薄毛が目立ちやすい頭頂部や前頭部だけでなく、自毛植毛をするときに重要となる側頭部、後頭部などの元気な毛髪も影響を受けることになります。

紫外線の強さは同じ日本の中であっても地域によって異なっています。しかし、いつ紫外線が強くなるかという傾向は全国的に共通していて、7月、8月が最も強くなっています。近年の天候の変化もあって、5月にも6月にも以前に比べて紫外線が強くなっています。そして、4月の紫外線は、まだまだ暑い9月の紫外線と変わらないほどの量になっています。

もう一つ紫外線の量で注意しなければならないのは、紫外線の種類の違いです。地上まで届く紫外線にはUV−AとUV−Bがあります。紫外線が多い日差しを浴びることで肌が焼けるのはUV−Bによるもので、こちらは変化が目で見てわかるので、その影響も想像しやすいところがあります。

それに対してUV−Aは、浸透性の紫外線で、波長が長いことから表面ではなくて、肌の奥にまで届きます。紫外線を浴びることによって大きなシワができるのはUV−Aの影響です。

頭皮は毛髪の重要な土台で、表面は洗髪などでもケアしやすいものの、深部のケアというのは、なかなか難しくなっています。そのケアしにくい深部にダメージを与えるのがUV−Aであるので、その量が多くなる時期は気になるところです。

季節による紫外線の量は、UV−AとUV−Bを合わせたもので、頭皮に悪影響を与えるUV−Aの量が多くなる季節は、一般に言われている紫外線が強くなる4〜8月とほぼ一致しています。

しかし、実際のUV−Aの量を詳しく見ていくと、5月の量は7月の量と同じくらいとなっています。5月には真夏と同じだけの紫外線防止を行っておかないと、頭皮のダメージが薄毛に結びつきかねないということです。

紫外線を防止するためには帽子をかぶるか日傘を使うという選択が普通ですが、UV−Aは繊維を通り抜けます。夏場の帽子は通気性をよくするための繊維の目が粗いものが選ばれがちですが、目が粗いほど紫外線が通過しやすくなります。

紫外線を防止することができるタイプの帽子も日傘も、遮光率が表示されています。遮光率が最も高いのは「遮光1級」で、99.99%がカットできます。遮光1級の中でも100%のカットを誇っているものもあって、これは完全遮光1級と表示されています。

遮光2級は遮光率が99.80〜99.99%未満、遮光2級は遮光率が99.40〜99.80%未満で、実際には大きな差はありません。

頭皮の健康を保つことを考えるなら、遮光率にこだわることなく、遮光の効果があるものなら大丈夫だといえます。近くに出るだけで、短時間だから、日光が出ていないからと安心するのではなく、できる限り遮光はするべきです。

というのは、紫外線の量は薄曇りでは80〜90%、曇りでは60%、雨でも30%ほどはあるので、紫外線が強い季節には安心することはできないのです。

紫外線が、どのように毛髪に影響を与えているのかというと、皮脂の酸化です。紫外線を浴びると活性酸素が発生します。活性酸素は酸素のプラスとマイナスの電子のバランスが崩れたもので、欠けている電子を奪うことで正常な酸素に戻っていきます。

電子を奪われることが酸化で、酸化すると粘度が高まります。頭皮の皮脂が酸化すると、毛穴から皮脂が取れにくくなり、頭皮の血流も低下しやすくなります。

紫外線で酸化するのは皮脂だけではなくて、細胞も酸化します。細胞は電子を奪われると破壊されてしまいます。破壊が続くと細胞の新陳代謝が進みにくくなり、傷みやすくなってしまいます。

頭皮が傷んで、皮脂も酸化したのでは、毛髪のダメージが大きくなるので、春から秋まで紫外線対策は欠かせないことになります。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕