毛髪の科学56 育毛剤と発毛剤の使い分け

育毛剤と発毛剤は違うものなのに、混同されがちで、効果が得られない使い方がされているだけでなくて、せっかくの効果を活かせないということにもなっています。

育毛剤は医薬部外品の扱いで、頭皮の血行をよくしたり、頭皮に必要な栄養を与えることで、健康的な毛髪を育てる目的で使われます。

そこから育毛という名称がつけられていますが、発毛サイクルを整えることで抜け毛を予防する効果が期待されていて、要は現状の維持を目指しています。

それに対して発毛剤は第1類医薬品で、薄毛の治療用という目的が明らかにされています。育毛剤は使用する対象者に特に定めはないのですが、発毛剤はAGA(男性型脱毛症)の人のためのもので、薄毛の状態を治療するためのものです。薄毛になった人の毛髪を生やし、増やすことを目指して開発されています。

AGAでは毛髪を作り出す毛包と呼ばれる毛母細胞の働きが低下していることから、毛包を活性化させることが必要で、低下の原因となっている男性ホルモンDHT(ジヒドロテストステロン)の作用に対抗できるように成分も内容量も決められています。男性ホルモンと5αリダクターゼ酵素が結びつくことでDHTが生成されます。

このように目的が違っていることから、使用されている成分も違っています。育毛剤では発毛促進成分、頭皮環境改善成分、抜け毛防止成分が使われます。発毛促進成分はセンブリエキス、ニンジンエキス、パントテニルエチルエーテル、ペンタデカン酸グリセリド、アデノシンなどです。

頭皮環境改善成分は炎症や雑菌の繁殖を抑えるもので、クジンエキス、セファランチン、ジフェンヒドラミン塩酸塩、グリチルリチン酸ジカリウム、サイトプリン、イソプロピルメチルフェノールがあげられます。抜け毛防止成分はt-フラバノン、エチニルエストラジオールなどです。

発毛剤に使われるのは発毛促進成分で、代表的なものはミノキシジル(発毛作用、血流促進)です。そのほかにもデュタステリド、フィナステリド、プロペシアがあり、どれもDHT抑制、抜け毛防止作用が認められています。

育毛剤で効果が得られるのなら、いつまで使ってもよいことにはなるのですが、薄毛に悩んでいる人の場合には、3〜6か月を目処にする例が多くなっています。発毛サイクルのうちの休止期から成長期に移行する期間は3か月以上であるので、長く見積もって6か月とされています。

この期間を過ぎても効果が認められない場合には、次の段階の発毛剤の出番となります。発毛剤は医薬品であるといっても、残念ながら誰にも同じような効果があるというものではありません。

一般的には使用を始めてから2か月ほどで効果が現れ始めて、つまり発毛が見られるようになり、4〜8か月で新たな毛髪が確認できるようになります。そして、1年から1年半で安定的に生えてくるとされています。

育毛剤にも発毛剤にも効果があるのだったら、同時に2つを使えば薄毛改善の効果が2倍になるのではないか、と考える人もいます。そういったことを期待する気持ちはわからないではないのですが、育毛剤も発毛剤も、それ一つだけで効果が得られるように成分や使用量が決められています。

一定量を超えて使っても、使った割の効果が上がらないということがあるわけで、育毛剤と発毛剤を同時に使っても、二重の効果が得られるわけではないのです。

それどころか、一つの製品で効果が得られるように成分の種類とバランスが決められているので、組み合わせて使ったことでバランスが崩れて、かえってマイナスになることにもなります。

マイナスというのは、他の成分のために有効性が妨げられたり、十分に吸収ができなくなることを指していますが、さらに進んで頭皮のかゆみやかぶれ、赤み、フケなどの頭皮トラブルが起こることにもなります。

医薬品である発毛剤には少なからず副作用もあり、育毛剤と一緒に使うことで頭痛や動悸、めまいなどが起こることもあります。その副作用のリスクが2倍になるかもしれないということを考えると、同時に使うことは決してすすめられることではありません。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕