毛髪の科学59 毛髪を元気にする栄養素

毛髪の状態は栄養に大きく影響されます。毛髪に影響を与えるものとして以前は黒い色の海藻がよいなどと、ほとんど迷信のようなことも言われてきましたが、今では科学的な研究が進んで、効果がある栄養素が明らかにされてきています。中でも重要になるのが良質なたんぱく質と特定のミネラルです。

薄くなっている部分は栄養の状態のほかにも血流やホルモンの影響などを受けて、濃さが違っていることが多くなっています。濃さというのは毛髪の本数と毛髪の太さのことです。本数は抜け毛の数やヘアサイクルによる成長速度によって変わってきます。ヘアサイクルが乱れると、抜けたあとの補充が間に合わなくなり、だんだん本数が減っていきます。

ヘアサイクルのリズムが正常であっても、栄養素が不足していると太くなりきる前に成長が止まることになり、毛髪が細くなって、これが薄毛の原因にもなっていきます。

良質なたんぱく質というのは、必須アミノ酸のバランスがよい食品を指しています。アミノ酸はたんぱく質を構成する成分で、体内では合成されないために食事から必ず摂らなければならない9種類は必須アミノ酸と呼ばれます。これ以外の11種類は非必須アミノ酸と呼ばれます。

必須アミノ酸が一つでも必要量に達していないと、たんぱく質としての栄養評価が下がります。該当するものとしては肉類、魚類、豆類、卵類、乳製品があげられます。

これらの食品は毎日食べるようにします。できれば2食以上食べるようにしたいのですが、若い男性では30%ほどが朝食を抜いているという調査結果もあります。女性でもダイエットのために食事の量を減らしているために、良質なたんぱく質が不足していることもあります。必須アミノ酸が含まれている食事ならよいわけではなくて、必要な量が摂れていることが大切になるのです。

ミネラルの中で特に重要となるのは亜鉛とマグネシウムです。まず、亜鉛について説明すると、亜鉛は毛髪の主成分であるケラチンの成長を促す重要なミネラルです。割合としては毛髪の80〜90%がたんぱく質で、そのうちの90%をケラチンが占めています。

亜鉛は栄養素の代謝や生命活動などに関わる化学反応に携わるミネラルです。200種類以上の酵素の構成成分であり、体内では皮膚、毛髪、肝臓、腎臓、睾丸、舌の味蕾などの新陳代謝が盛んな細胞に多く含まれています。

不足すると新陳代謝の低下から脱毛、爪の異常、皮膚炎、味覚異常などが現れやすくなります。男性の場合には精液欠乏症や勃起不全、女性の場合には胎児の成長不良が起こりやすくなるという報告もあります。

食品では、カキ、牛肉、豚肉、鶏肉、鶏卵(特に卵黄)、ナッツ類に多く含まれています。その多くは良質なたんぱく質とも一致しています。

亜鉛には5αリダクターゼの働きを抑制する効果もあります。5αリダクターゼは体内にある還元酵素の一種で、男性ホルモンのテストステロンと結合して男性型脱毛症(AGA)を発生させるDHT(ジヒドロテストステロン)を生成することが知られています。これを予防するにはDHTを生成させないことが重要で、それに亜鉛が役立つということです。

もう一つのミネラルのマグネシウムは多量元素のミネラルで、体内では60~65%は骨に含まれ、残りは肝臓、筋肉、血液などのタンパク質と結合して存在しています。

300種類以上の酵素に作用する補酵素であり、筋肉の収縮、神経の興奮抑制、血管拡張による血圧降下などの作用があります。食品では、ひじきやわかめ、アーモンド、ピーナッツ、大豆などに多く含まれます。

体内には3000種類以上の酵素がありますが、どの酵素も補酵素がなければ働くことができません。マグシウムは300種類の酵素の補酵素となっていて、全身の細胞の成長にも影響しています。頭皮も毛髪も影響を受けているので、マグネシウムが多く含まれる食品も摂るようにします。

その食品の中には、ひじきやわかめも含まれています。毛髪によいとされてきた海藻があるわけで、海藻の黒い色や濃い毛髪を想像させる形などではなくて、マグネシウムの効果で毛髪が元気な状態になっていたことが別の形で効果として伝えられたのかもしれません。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕