毛髪のケアのためには、髪の毛の根元にあたる毛母細胞に栄養素を送ることが大切になります。そのために頭皮の血流をよくしようとするわけですが、血流がよくなっても毛母細胞に必要な栄養素が不足していたのでは、思ったように育毛や抜け毛予防をすることができなくなります。
毛髪の栄養素というと、たんぱく質(アミノ酸)、ミネラルの亜鉛があげられます。もちろん、これらの栄養素も必要ではあるものの、基本中の基本となるのは糖質です。
糖質にはブドウ糖が含まれていて、ブドウ糖は全身の細胞がすぐにエネルギーとすることができる重要なエネルギー源です。少しややこしい話になるかもしれませんが、ブドウ糖が細胞の中に取り込まれる仕組みについて紹介します。
細胞の中にはGLUT4と呼ばれるブドウ糖を取り込む輸送体があります。GLUT4は普段は細胞の奥にあるのですが、インスリンという膵臓から分泌されるホルモンによって細胞膜に移動してきて、ブドウ糖を取り込んでくれます。
インスリンというと糖尿病の話で耳にしたことがあるかと思います。糖質が含まれたものを食べて、血液中のブドウ糖が増えるとインスリンが分泌されて、ブドウ糖が取り込まれます。
インスリンの分泌量が減るか、取り込みの能力が低下すると細胞に取り込まれなかった分だけ血液中のブドウ糖の量が増えて、一定量を超えると糖尿病と診断されます。
インスリンが少ないと血糖値(血液中のブドウ糖の値)が下がりにくくなるわけですが、そんな状態でもブドウ糖を取り込まれるようにする方法があります。それは運動によってGLUT4が移動するようにさせることです。
運動をするとブドウ糖をエネルギー源として使うために、インスリンなしでもGLUT4を移動させる酵素(AMPキナーゼ)が作られます。運動といっても激しい筋トレをする必要はなくて、ウォーキング程度の軽い運動でも大丈夫です。
運動をして酵素が働くと全身の細胞のブドウ糖の取り込みがよくなり、そのブドウ糖を使って細胞の働きがよくなると当然、毛母細胞の働きもよくなっていくということです。この仕組みがあるので、毛髪が気になってきた方には歩くことがすすめられます。
歩くと全身の血行がよくなりますが、頭皮は心臓から離れているうえに毛細血管が多いことから血流が低下しやすくなっています。特に頭頂部は毛細血管が少ないために、全身の血流がよくなったとしても、頭頂部の毛母細胞には栄養素は送られにくくなっています。
歩くことによって血流がよくなり、ブドウ糖がエネルギーを作り出したときには、体温が上昇して、うっすらと額やワキの下などに汗をかいてきます。
その後に背中や胸などに汗をかくようになるのですが、時間としては歩き始めてから10〜15分くらいたってからです。これはウォーキングによる有酸素運動によって、ブドウ糖の燃焼(代謝)が盛んになるまでに、これくらいの時間がかかるからです。
この時間を過ぎると、燃焼は脂肪(脂肪酸)が中心になってきます。なぜかというと、歩くことによって筋肉が温まり、筋肉の中にある脂肪分解の酵素(リパーゼ)が盛んに働くようになるためには、10〜15分の時間が必要だからです。
頭皮の細胞が温まって、頭皮から汗が出るようになるまでには、さらに5〜10分は必要になります。ブドウ糖を多く取り込んで、多くのエネルギーを作り出すのは筋肉で、首から上には筋肉が少なくて、手足や腹筋、背筋などの大きな筋肉で温められた血液が頭皮まで送られてくるまでには時間がかかります。
頭皮から汗が出るようになったときには、血流がよくなり、毛母細胞で作られるエネルギーが増えている状態なので、頭皮の状態をよくすることが考えるなら、頭皮から汗が出るまで歩くようにすることです。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕