寝起きに“コップ1杯の冷たい水”を飲むことがすすめられています。その理由としては寝ている間に自然と皮膚や口、鼻から蒸発して失われた水分を補うことがあげられています。この水分の補給によって血液中の水分を補い、血液の濃度を正常に保って、血流をよくするためだと説明されることが多いようです。補っているのは血液ではなく、全身の細胞の水だという考えもあります。
血液中の水分は常に正常な状態を保つ恒常性の働きがあって、蒸発する水分が多くなって血液中で足りなくなると、細胞の水を血液中に送ることから細胞の水分が減っていきます。細胞は一定の水分量で正常に働くので、1杯の水は細胞に送るための水であるという考えもあります。
それならば“冷たい水”である必要はありません。わざわざ冷たい水と断っているのは別の理由があるからです。その理由ですが、身体の中には「胃‐大腸反射」という仕組みがあって、胃が刺激されると、その刺激が神経を伝わって大腸を刺激して大腸、中でも便通に直接的に関わる直腸の蠕動運動を促して、排出しやすくする仕組みがあるからです。
この反応は食べ物を食べたとき、よく噛んだときも同じように起こりますが、冷たい水は胃を強く刺激しやすく、直腸の動きも盛んになります。
直腸にたまっている便は、便秘が続くと直腸壁から水分が吸収され続けているために、通常の便の状態よりも固くなって、ますます排出されにくくなります。そこで水分を飲むことで便が軟らかくなって出やすくなる、という説明をされることもあります。しかし、水は飲んで、すぐに直腸の水分が補われるようなことはないので、この理由で便通がよくなるわけではありません。そこで研究が進められて、たどり着いたのが「胃‐大腸反射」だったのです。
しかし、飲んで補う水分が不足すると大腸の水分も不足することになるので、起きがけの水に限らず、常に水分を多めに飲むことは便秘の解消に役立つといえます。