私たちは、寝ている間にコップ3杯分もの汗をかく、といわれます。人間の身体の水分は体重の60~70%もあります。60%が水分とすると、体重が60kgの人では36kgの水分があることになります。この量からするとコップ3杯分なら、わずかな量と思えるかもしれませんが、身体には大きな影響があります。それは汗によって出た水分の多くは、血液中から失われたもので、水分が少なくなることで血液が濃くなり、心臓や血管の負担を増加させるからです。
体表面から水分が失われたときには、内側から補われ、最終的には水分が豊富にある血液中から補われます。血液中の水分が大きく減ったときには、細胞内の水分から補われます。細胞の水分は一定量に保たれないと完全に機能しないので、水分が大きく減ると新陳代謝が低下するのです。
血液中の水分減少は病気にも結びついていきます。病気の発症は1日24時間、平均的に起こるものではなく、それぞれの病気によって発生しやすい時間帯があります。心臓病の中でも目立っている急性心筋梗塞は、午前10時前後に特に多く起こっています。
心筋梗塞は、心臓の筋肉の血管である冠動脈に血液中が固まった血栓ができて、それが冠動脈に詰まってふさぎ、詰まった先の心筋に血液が流れなくなって、心筋の一部が傷んでいきます。それが突発的に起こるのが急性心筋梗塞で、生命を脅かす恐ろしい病気となっています。午前中に急性心筋梗塞が起こりやすい原因としては、朝には寝ている姿勢から立ち上がって動くことで血圧や心拍数が急に上昇することが一つにあげられています。それと同時に、大きな原因として考えられるのが、血液の粘性が高まっていることです。
血液の粘性が高まるということは、血液がベトベトした状態になることです。ベトベトした血液は固まりやすく、血栓となって冠動脈をふさぎやすくなるとともに、赤血球が毛細血管を通過しにくくもなります。毛細血管の内径のサイズは約8μ(μ=1000分の1mm)ほどです。それに対して赤血球のサイズは10μほどで、毛細血管よりも大きくなっています。そこで、赤血球はつぶれて狭いところを通過していきます。一つずつなので通過できるわけで、ベトベト状態で二つ以上がくっついたら通過できなくなります。これでは、全身に効率的に酸素と栄養素を運び、二酸化炭素と老廃物を運び出せなくなります。全身の細胞を正常に働かせるものが摂りにくくなり、不必要なものが溜まっていったら、健康維持にマイナスであることは明らかです。
血液は80%が水分で、汗をかくと細胞内の水分とともに血液中の水分も失われていきます。そのために水分が減って血液がベトベトになるというわけです。寝起きにコップ1杯の水を飲むことは、便通をよくすると同時に、血液の状態をよくするためにも大切だということです。