水を飲まなくても体内の排水量が増える

当たり前のことをメディア関係者から聞かれることがあります。「わざわざ聞いてこなくてもいいのに」と思わないでもありませんが、質問に答えているうちに私たちが当たり前と思っていただけで、周りの人たちはそうでもなかったと気づかされることがあります。だから、こんなことを聞いてくるのかとは思わないようにして、できるだけ返答するようにしています。
最近あったのは「水を飲んでいないのにトイレが近くなり、しかも多くの量が出ることがある理由は」という質問でした。これは塩分を多く摂っている人によくみられることですが、水分摂取が少ないと血液中の水分が少なくなり、塩分が濃い状態になることから、塩分を出すために排出量が増えることがあるからです。これを私たちは当たり前の反応だと認識しています。
塩分を多く摂っていると、血液中の水分が増えます。塩分のナトリウムには水を吸収する作用があり、血液中のナトリウムが増えるほど血液の中の水分が増えて、血管に圧力がかかるようになります。また、血液中のナトリウムが多くなると血管の細胞の中にもナトリウムが入っていきますが、細胞の中のナトリウムも水分を吸収するので血管の細胞が膨らむような状態になります。そのために血管が狭くなり、弾力も低下しやすくなります。これが塩分を摂りすぎると血圧が上がる原因の一つとなっています。
血圧の上昇を抑えるといった意図で塩分を控えると、ナトリウムが水分を離すことから、この水分が排出されるので一時的に排出量が増えることがあります。これも当たり前の反応です。
排出量ということでは「運動をして汗をたくさんかいているのにトイレが近くなる理由は」と聞かれたこともあります。これは代謝水が増えたためです。運動をして細胞での代謝が盛んになるとブドウ糖や脂肪酸が燃焼して、その結果として二酸化炭素と水が発生します。燃焼が多くなるほど代謝水が増えていきます。体内で水分が作られるということです。
それに生活習慣病の要素が加わることもあります。糖尿病は血液中のブドウ糖が多くなりすぎる病気です。本来なら細胞が取り込んでエネルギーとして燃焼するべきブドウ糖が、取り込みが悪いために排出量が増えます。すると体内の水分が減ったことで、それを補うために喉が渇いてきます。糖尿病の人が水を飲んで排尿量が増えるのは、水を飲むのが先ではなくて、水分が失われることが先に起こっているということです。
お酒を飲むと利尿作用が起こります。これはアルコールを分解することによる代謝水が増えることと、濃くなったアルコールを排出するために起こることと説明されています。
これも排出量を一時的に増やす原因となり、それによって体内の水分が減るので、飲酒後には水を飲むことがすすめられます。他に利尿作用を進めるものとしてはコーヒー、緑茶、紅茶などのカフェインが多く含まれるものがあげられます。これは飲み物を飲んだ結果なので、「水を飲んでいないのにトイレが近くなる」ということとは少し話が違っていますけれど。