文部科学省の「初めての通級による指導を担当する教師のためのガイド」には発達障害に関する部分があり、注意欠如・多動性障害の理解について、前回に続いて特性を紹介します。
(1)見逃されやすい障害であること
注意欠如・多動性障害は、障害そのものの社会的認知が充分でなく、また注意欠如・多動性障害のない子どもにおいても、不注意、衝動性・多動性の状態を示すことがあることから、注意欠如・多動性障害のある子どもは、「故意に活動や課題に取り組むことを怠けている」あるいは「自分勝手な行動をしている」などとみなされてしまい、障害の存在が見逃されやすいところがあります。
まずは、これらの行動が障害に起因しており、その特性に応じた指導と支援が必要であることを保護者や学校教育関係者が認識する必要があります。特に、早期からの適切な対応が効果的である場合が多いことから、低学年の段階で学級担当が、その特性を充分に理解して、適切な指導や必要な支援の意義を認識することが重要となります。
なお、平成24年に文部科学省が実施した全国的な実態調査では、医師などの専門家による判断に基づくものではないものの、学習窓外や注意欠如・多動性障害などの可能性があり、学習や生活の面で特別な教育的支援を必要としている子どもが小・中学校の通常の学級に6.5%程度在籍しているとしています。
(2)他の障害者との重複がある場合が多いこと
注意欠如・多動性障害は、中枢神経に何らかの要因による機能不全があると推定されており、学習障害や自閉症を併せ有する場合があり、その程度や重複の状態はさまざまであるので、個々の子どもに応じた対応が必要です。
(3)他の事項への波及
ソーシャルスキルの習得、対人関係形成の際にさまざまな困難が生じる場合があります。さらに反抗挑戦性障害や行為障害などを併存することがあり、その場合には専門機関との連携を密に図る必要があります。