私たちが生きていくためには呼吸によって酸素を体内に取り込むことが必要です。酸素は健康に役立つものではあるものの、吸いこんだ酸素のうち2~3%は身体に悪影響を与える活性酸素になります。
活性酸素は、今でこそ「体をサビさせるもの」「病気の原因になるもの」として知られるようになりましたが、活性酸素がテレビや雑誌などで紹介されたばかりのころは、「酸素は身体に必要なもので、それが活性するのだから健康によいものではないか」と考える人もいたものでした。
人間が活動するための生命エネルギーは三大エネルギー源と呼ばれる糖質、脂質、たんぱく質から作り出されています。そのエネルギーが作られるときに酸素が必要となります。例えば、糖質はエネルギーとなるブドウ糖となってから燃焼しますが、酸素なしではブドウ糖1分子から2分子のエネルギー物質のATP(アデノシン三リン酸)が作られるだけです。
人間の身体を構成している細胞は60兆個以上もあり、それぞれの細胞の中にはミトコンドリアという小器官が数多くあります。このミトコンドリアの中では、ブドウ糖が酸素と反応して燃焼して、生命維持に欠かせないエネルギーを作り出すTCA回路があり、酸素を用いることでブドウ糖1分子から36分子ものATPが作り出されます。
ミトコンドリアは、よく火力発電所にたとえられます。火力発電所でエネルギー源を燃やして電気を作るときに燃えカスの産業廃棄物が発生します。活性酸素も、これと同じように、生命維持のためのエネルギーを作り出したときの産業廃棄物ということができます。
活性酸素には、「スーパーオキサイドラジカル」「ヒドロキシルラジカル」「過酸化水素」「一重項酸素」の4種類があります。発生の仕方や毒性などに違いはあっても、同じ特徴を持っています。それは、電子のバランスが崩れていることです。
一つの酸素は、通常はプラスの電子が4個、マイナスの電子が4個で対の形になってバランスが取れています。このバランスが崩れて、マイナスの電子が1個欠けたものが活性酸素とされています。
酸素と活性酸素の違いは、電子1個という、ほんの少しだけの違いでしかありませんが、その違いが身体の中で大きな変化を起こしているのです。