私たちの身体には病原菌などの外敵と闘う免疫システムが備わっています。免疫細胞の白血球とリンパ球が、その代表的なものですが、もう一つ重要な免疫システムがあります。それが活性酸素なのです。
細菌などが身体の中に入ってきたときに、その近くに活性酸素があると、活性酸素は細菌の細胞膜から電子を奪い取ります。電子を奪い摂った活性酸素はプラスとマイナスの電子のバランスが取れて、正常な酸素に戻っていきます。マイナス電子を奪われた細胞の細胞膜は、細胞の中からマイナス電子を移していって細胞膜を維持しようとします。次々と電子が移っていって、細胞の中心部にある核のマイナス電子が奪われると、その細胞は働きが止まり、破壊されます。
活性酸素というと、悪玉のイメージが抱かれがちですが、適度な量の活性酸素は身体の健康を守るために必要なものなのです。
ところが、活性酸素が体内で多量に発生すると、細菌などからだけではなく、自分の身体の細胞からもマイナス電子を奪うようになります。活性酸素の発生によって核を破壊された細胞の破壊は一つだけでは終わりません。マイナス電子が欠けている限りは、次々に隣の細胞から電子が奪われていって、ドミノ倒し式に細胞が破壊されていくことになります。
身体の中には、活性酸素が多量に発生したときに、電子のバランスを元に戻して、活性酸素を消し去る働きをする酵素が備わっています。その酵素の代表的なものはSOD(スーパーオキシドディスムターゼ)です。
細胞レベルで見ると、細菌や病原菌なども人間もほとんど構造に変わりはなく、細菌などを壊すメカニズムは、そのまま人間の身体にも通じます。違っているのは、人間は細胞の数が約60兆個と非常に多く、細胞が破壊されて身体に影響が出るまでには長い期間がかかるということです。
細胞が破壊されたところが血管であれば血管が傷ついていくことになります。血管が傷つけられると弾力性が徐々に失われていって動脈硬化になりやすく、また血流も低下するようになります。全身の細胞に新鮮な酸素と栄養素を運び、細胞の老廃物を運び去ることによって細胞の新陳代謝を高めているのは血液です。血管が傷んだために起こる血流の低下は、全身の細胞の老化を進めていくことになります。
血流が低下すると、全身の細胞に血液を早く送って、酸素と栄養素を補給するために自律神経が反応して、血圧が上昇します。血管が傷ついているところに血圧が上昇したら、動脈硬化が促進されてしまうことになります。
活性酸素によって細胞が傷つけられると、発がん物質などの有害物質が細胞内に侵入しやすくなります。そのために細胞が、さらに傷みやすくなり、細胞の働きが正常に保たれにくくなります。
活性酸素によって破壊されたのが膵臓や肝臓などの細胞であれば、その器官の機能が低下していくことになります。中でも膵臓や腎臓などは活性酸素に弱い臓器であり、活性酸素が多く発生するほど、機能も低下しやすくなっています。さらに、活性酸素による細胞の破壊が続くと機能の低下が広がって、がんや糖尿病などの生活習慣病が引き起こされるようになるのです。