活躍社会推進2 誰とも代わることがない尊い存在

前回の連載コラム(活躍社会推進1)は、「誰とも代わることがない尊い存在」という言葉を使って、「もともと特別なonly one」である発達障害児・発達障害者の支援が重要だとことを述べて、次へとつなぎました。

それを受けての書き出しは、お釈迦さまの言葉として伝えられる「天上天下唯我独尊」で、発達障害にも通じるところがあるとも言われています。天上天下唯我独尊は誕生した直後に発せられた言葉と伝えられ、「宇宙の中で自分より尊い者はいない」と解釈されることがあります。

しかし、お釈迦様が、そのような独善的な考えを示されたとは考えにくいことから、「ただ一人、誰とも代わることがない尊い存在」という意味であると理解されることが多いようです。

「もともと特別なonly one」のフレーズがあまりにも有名な『世界に一つだけの花』が大ヒットしたのは2003年のことですが、この年は「失われた10年」とされるバブル崩壊の1991年から2002年までの景気低迷の時期からの変化、大転換を目指した思いが込められています。

2003年は子どもを取り巻く環境の変化が大きく取り上げられた年でもありました。

この年に発達障害児の調査が文部科学省によって本格的に始まりました。2006年には全国で約7000人の確認数だったのが、2020年には9万人を超えるまでに大きく増加しました。

発達障害は自閉症スペクトラム障害(ASD)、注意欠如・多動性障害(ADHD)、学習障害(LD)の3タイプに大きく分けられています。

学習や生活の面で特別な教育的支援を必要とする児童生徒数について、文部科学省が2022年に実施した『通常の学級に在籍する特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する調査』の結果では、約8.8%程度の割合で通常の学級に在籍している可能性を示しています。この約8.8%の発達障害児以外に「何らかの困難を有していると教員が捉えている児童生徒がいる」と注意を促しています。

さらに調査によると、発達障害の可能性がある児童生徒のうち、校内委員会で特別な教育的支援が必要だと判断されたのは18.4%と5人に1人にも満たない状態です。しかも、発達障害の可能性のある児童生徒のうち、38.6%が「いずれの支援も受けていない」という結果になっています。

早期発見が充分でないこともあり、実際に発達障害児は10%に達していると推定されていますが、海外の複数の調査では発達障害児の割合は14〜19%にもなっています。この数字は、まだまだ調査は不十分であり、世の中に知られないままになっている子どもと、その保護者が多く存在していることを示しています。

早期発見のシステムが確立している海外では、早期支援が充実していることもあり、発達障害が的確に把握されています。我が国も就学前障害児の無償化を受けて、発達障害の支援体制の拡大によって多くの対象者が発見されるものとみられています。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕