漢方薬は組み合わせて使うのが基本である理由

漢方薬に使われる植物の素材が、健康食品の素材として使われていることがあります。例えば、田七人参(三七人参、田三七人参)は肝機能の改善効果がある漢方薬の重要な素材となっています。そんなに効く漢方素材であるなら、単独で使ったらよいのではないか、という考えもあるかと思います。その考えの通りの質問をしてきた雑誌記者がいたので、そのやり取りの内容を文章にしてみました。
漢方薬は、ただ効く素材を選んで、それを多く飲めばよいというものではありません。効くものは、他の臓器に悪影響を与える可能性があるものもあって、その“副作用”のような反応を抑えるために別の素材が組み合わされることがあります。これによって、多くの量を継続的に使うことができるようになります。
漢方薬はピンポイントでターゲットにする臓器がありますが、その臓器だけに作用するのではなく、関係する臓器に複合的に作用することで、より効果を高めるという組み合わせもあります。肝臓と腎臓は連動して働いている臓器で、ともに血流が盛んになることで改善効果が高められます。そのため、肝機能を高めるために、これらの効果がある素材が組み合わされます。
こういった組み合わせのおかげで、漢方薬は西洋医学の医薬品とは違って、長く使い続けることができます。西洋医学の医薬品は長く使い続けると身体が慣れてきて効き目が弱くなったり、副作用が強く出るようになることもありますが、安全に、効果が得られるのが漢方薬の特徴と言えます。
漢方素材を複合的に組み合わせたものは方剤と呼ばれます。漢方薬と一般に呼ばれるときは方剤を指すことが多くなっています。方剤でなく、単独で使われるものは単味と呼ばれますが、この例外となっているのは人参だけを煎じた独参湯(どくじんとう)と甘草だけを煎じた甘草湯(かんぞうとう)だけです。
健康食品では漢方薬の素材を煎じるのではなく、そのまま単独で使ったものが多くなっています。これは2種類以上の素材が使われると漢方薬と同じようになるからと説明されています。