理論は正しくても歩き方の写真が違っている

ウォーキングのスタイルが正しくない人が多いのは、歩き方を教えている書籍や番組の画像に問題があるから、ということは何度が触れてきました。ある健康雑誌が別冊として、正しい歩き方と間違った歩き方を取り上げて、ウォーキング理論を前面に打ち出して特集を組んでいました。これをテキスト代わりにすれば正しいウォーキングを紹介するときに使えると思って、中身も確認しないで購入しました。
中身を見ないで購入したのは、もしも正しい方法であるとして間違った方法でも紹介していたら、これはネタとして使えるという考えがあったからです。その“もしも”をいきなり見つけてしまいました。記事の中身は、それなりの専門家が監修していて、編集者もチェックをしているので、重箱の隅を突くようなことをする必要はなかったのですが、これだけは見逃せないというのがウォーキングのスタイルです。
歩き方の別冊なので、歩いている姿の写真ばかりですが、歩いているシーンを切り取ったのではなくて、歩いている形で止まってもらって撮影したことがわかる画像でした。そのため、文章で表現していることと画像が合っていないのですが、それがわからない人にとっては、この違和感がある歩き方が正しいようにも思えてしまいます。文字に書かれていることよりも画像で覚える人が多いので、間違ったと思える歩き方が、まさに“一人歩き”してしまいます。
特に気になったのは、腕を大きく前後に振って、勢いよく前進することの効能が書かれているところで、肘を曲げて前後に振っています。これでスタスタと歩幅を広げて歩くようにと書かれていても、肘を曲げると腕の振りは早くなりますが、歩幅は広がりにくくなります。肘を曲げると振り子の長さが肘までになって、短い振り子が数多く動くようになります。それに合わせて歩幅を広げるとなると歩くというよりも走らないといけなくなります。別冊に載っていた写真のように歩幅を大きく広げて歩くことと、肘の振りが早くなることは一致しないのです。
では、どうすればよいのかというと、肘を曲げずに、振り子の長さを肩から指先までにします。こうして振り子を長くすると歩幅は自然に広くなり、勢いよく歩けるようになります。
もう一つ気になったのは、効果的な歩き方として紹介されていたノルディックウォーキングです。これも理論は正しくて、ポールを使って勢いよく前進することによって普通に歩くよりも20%もエネルギーを多く使うことができると書かれていました。これは事実ですが、ノルディックウォーキングとして紹介されていた写真がポールウォーキングのポールを使った歩き方で、しかもポールを前方に斜めについていました。これは腕の力も使って、足腰の負担を減らして歩くためにはよい方法であっても、勢いよく歩くという主旨とは違います。
ノルディックウォーキングのポールは設置面のゴムパッドが斜め45度になっていて、後方に斜めにつくことで推進力を得て、勢いよく前進することができます。このことを監修者が知らなかったということではなくて、監修者が見た後で写真が違って入ったのか、そもそも写真を見せないままOKを出してしまったのだろうと思いますが、この写真の歩き方を頭の中に入れてしまったら間違ったままの歩き方をして、それで文章に書かれている通りの効果があると思い込んでいたら、これは不幸なことです。
このような間違いは、これまでも何度となくあり、何度も指摘してきましたが、今回の別冊は正しい歩き方と間違った歩き方を指摘する内容であるのに、正しいといって間違いを示すようなことだけは見逃すことができないのです。