発達障害は一般には自閉症スペクトラム障害、注意欠如・多動性障害、学習障害があげられることが多くて、この3種類だけが発達障害と勘違いされることがあるのですが、三大発達障害の他にもトゥレット障害、吃音障害、そして発達性協調運動障害があります。発達性協調運動障害は三大発達障害ではないものの、発達障害の一つであるということです。
発達性協調運動障害(DCD:Developmental Coordination Disorder)は粗大運動(歩く、走る、跳ぶなど)や微細運動(字を書く、ハサミを使う、紐を結ぶなど)、強調運動(スキップする、楽器を演奏する、縄跳びをするなど)の発達が、その人の知能から期待される水準よりも遅れているか稚拙であり、そのために日常生活に著しく支障をきらす場合に診断されます。ただし、脳性まひなどの神経疾患や筋疾患は発達性協調運動障害から除外されています。
発達性協調運動障害の発現率ですが、5〜11歳の子どもの場合は5〜10%とされています。男子は女子よりも発現率が高くて、男女比は2:1という報告から7:1という報告まであって、実際のところはわかっていないのですが、男子は発達性協調運動障害のために苦しんでいることが多いということは間違いないことです。
発達性協調運動障害の子どもは、乳児期には寝返りやハイハイ、お座りが遅いことから気にかけられることがあり、少し成長してからは階段を上る、自転車に乗る、シャツのボタンをかけるということがうまくできないということが現れます。できたとしても、同年代と比べて動きがぎごちなく、時間がかかることがあります。さらに成長してからは字を書く、パズルの組み立て、チームでの球技などがスムーズにできず、不正確になるということもみられるようになります。
それが日常生活に支障を生じさせていないなら、まだ障害というほどのことではなくても、服を着るのに手間取る、こぼさずに食事をすることができない、身体に適した遊びができない、ハサミや定規などの道具がうまく使えないということになると、発達性協調運動障害と判定されることになります。
このような状態になっていると、人並みはずれた不器用、極端に運動が苦手な子と言われて、その原因として過保護な育児や運動不足があげられて、親を悩ませ、苦しませることがあります。しかし、これは親のせいではなくて、発達性協調運動障害である場合があるのです。発達障害の改善に実施される運動療法は、発達性協調運動障害の改善にもつながることが明らかにされています。