歩くのは最も簡単な健康法だと言われています。これは特別な身体的な問題がなければ、苦労をせず、簡単に歩くことができるという考えがあるからです。しかし、実際に健康効果が得られるように歩こうとすると、足を前に大きく踏み出して、かかとから着地して、徐々に足裏の前側に体重を移動させていって、親指で蹴り出すようにして、今度は体重を前に移動させていって、反対側の足を前に出すようにします。これは下半身の動きで、上半身は足とは反対の腕の動きをします。右足が前に出るときには左腕が前に出て、左足が前に出るときには右腕が前に出るというように、上半身と下半身では逆の動きとなります。
これを当たり前のことだと思って、子どもたちの歩き方を見ていると、当たり前が当たり前でないことに気づくことがあります。右足と右手が一緒に出る、ということではなくて、腕を使わないで歩いている子どもがいるのです。腕を前後に振って歩いていると体幹が安定します。上半身が左右に揺れることが少なくなり、上体を安定させて前進しやすくなります。身体が左右に揺れるということは運動エネルギーが左右に流れているということで、その分だけ前進のためのエネルギーが低下することになります。
上半身と下半身で逆の動きとなっているときには上体が安定して、グイグイと前進することができるので、歩幅を広げて足の筋肉を充分に使うことができます。歩幅を広げて歩くと足の筋肉が刺激されて、筋肉を強くすることで筋力が高まり、筋肉が長く疲れないように使うことができる筋持久力も高まります。こういった歩き方をすることによって、ますます筋肉が強化されて、歩きやすい状態になっていきます。
振り返ってみると、正しい歩き方というものを、子どものときの、いつ教わったのか、そもそも教わったことがあるのかと記憶を辿ってみても、思い出せないという人が多いようです。学校で集団で行進をしたときにも周囲と合わせて歩くことを教えてもらったことはあるものの、正しい歩き方、効率のよい健康的な歩き方というのは、大人になってウォーキング教室が初めてだったという人が多くなっています。
発達支援のために運動療法が効果があるというのは正しいことですが、それと同時に歩き方を運動療法に入れてもらえないか、そのために正しい姿勢と歩行法を身につけるように2本のポールを使ったノルディックウォーキングが活用できないかと考えているところです。