食事を中心とした発達支援を手がけていることから、どうしても食事に関する対応マニュアルが気になってしまうのですが、それ以外の子どもの生活への対応マニュアルを見ると、発達障害への視点が欠けていることに目が奪われます。
通常の方法をマニュアル化すると、該当者が多いところが手厚くなり、該当者が少ないものは個別に対応するということでマニュアルから省かれることもあります。
しかし、発達障害児は通常学級で学ぶ子どもでも8.8%が該当するという文部科学省の調査結果があり、それ以外の特別支援学校、特別支援学級で学ぶ子どももいます。8.8%という数字は担任が把握した割合であって、見逃しなどを考えると、以前から言われてきた10%というのは、ほぼ当たっていると考えられます。
それを考えると、発達障害児への対応があって当たり前と思うのですが、期待どおりにはなっていないのが実情です。教室内での学習は集団で、効率よく行うために、教師側のマニュアルが存在しています。教師が話すことは聴覚の異常がなければ、全員が聞き取っていることを前提としています。
声が耳から入っていれば、それで同じように理解するということを考えていても、耳からは声だけでなく、教室内のあらゆる音が入ってきます。通常であれば優先順位をつけて、聞くべきことを脳に届け、そうでないものは解除したり弱めたりという調整が行われています。
ところが、発達障害の聴覚過敏では、耳から入ってきて、脳まで届いた声や音は、その強弱のままに把握されます。そのために、肝心な教師の声が聞こえていない、他の音が邪魔になって声が消されているということも起こります。
そのことを配慮して、生徒が聞き取れているのか、理解しているのかを判断して、教え方を工夫することが必要ですが、必ずしもそうはなっていないのが現状です。
〔発達支援推進協議会 小林正人〕