発達障害がある人を発達障害者(18歳未満は発達障害児)にしているのは社会的障壁であるというのが、発達障害者支援法の根幹的な考え方です。
発達障害がある人は、それだけで発達障害者となるわけではありません。発達障害があって、それに社会的障壁が加わることによって日常生活や社会生活に制限を受けていることで発達障害者となります。社会的障壁さえなければ発達障害者ではなく、社会に馴染めないために生きにくさを感じたまま生活をしなければならない発達障害者でないようにするには、社会的障壁を取り除くことが大切になります。
社会的障壁は定義としては、日常生活や社会生活を営む上で障壁となるような社会における事物、制度、慣行、観念その他一切のものを指しています。発達障害者支援法に書かれていることで、わかりにくい表現となっていますが、身体障害に例えてみます。
車椅子を使っている人が、自力では乗り越えられない段差は目に見える障壁で、これは周囲にいる人が1人手助けすることで、その段差は乗り越えられるかもしれません。しかし、段差は一つだけでなくて、周囲の手助けを求めようとしても誰もいないこともあるでしょう。また、手助けがあったとしても乗り越えられない段差や坂もあります。
歩道橋では2〜3人の手助けが必要です。常に障壁を乗り越えるためには、移動中に、ずっと手助けしてくれる人が付き添うことも必要で、これがかなえられる人は多くはないはずです。このように段差を乗り越えることが、いつでも可能で、乗り越えるために苦労を感じないことが必要ですが、このような苦労を感じてしまう道路の状態が障壁です。
さらに、そのような苦労を感じずに済むように地域の方々が見守り、違うルートを示してあげる、場合によっては車椅子で移動しなくてもよいように代わりに用事を済ませるというようなことが障壁を取り除くことになります。
発達障害では、なかなか目に見える障害ではないことがあり、この社会的障壁についても理解されにくいことがあるのですが、これを理解して、解決に手を差し伸べることがないことも社会的障壁です。そのような状況に気づかす、放置しておくことも社会的障壁だということができます。
〔発達支援推進協議会 小林正人〕