栄養学は、食品や栄養素が体内に与える影響について研究する学問で、それに基づいて身体の成長と健康の保持に必要な栄養素を摂取することを目的としています。私たちが研究している発達栄養学は、成長段階の子どもの心身の発育に影響を与える栄養学を取り上げていますが、一生涯の栄養摂取の中で子どもの期間を切り取って、そこに集中しているだけではありません。子どもというと年齢的には乳幼児期から18歳までを指していますが、発達栄養学が対象としているのは生後1年以降の幼児から中学生までです。
親の保護下にあって、食事をしている年齢を指していて、本来なら、この年齢の子どもの栄養学を全般的に手掛けなければならないのですが、あえて発達障害の子どもたちに絞って研究を進め、その発達障害のために通常の栄養学が対応できない範囲の栄養学に挑戦しています。
発達障害には極端な偏食が特徴的にみられます。極端な偏食というと、自閉症スペクトラム障害に多い感覚過敏によって、五感(視覚、味覚、嗅覚、聴覚、触覚)の感覚が鋭すぎることから食品や料理に強い拒否反応が起こることが指摘されています。もちろん、このことは多く見られることで、成長期には充分なエネルギー源とビタミン、ミネラルなどの摂取が重要なことから対応が求められます。しかし、通常の食事指導では対応が難しい極端な偏食は、感覚過敏に限らず、注意欠陥・多動性障害にもみられ、あまり関係がないように思われがちが学習障害の子どもにもみられます。
物理的な感覚だけでなくて、精神的な部分も大きく影響していて、限定された人が作ったもの、限られた食卓でだけ食べられないものがあるということもあります。これを通常の栄養学の範囲で対応するのは困難なことです。発達障害の子どもにみられる食事の問題を解決することができる方法なら、それ以外の子どもの食事に関する問題も解決することができます。それくらい大変だと認識されている栄養指導に、私たちが取り組むのは、メディカルダイエットの研究の中で得られたエネルギー代謝学という手法が活かされることがわかってきたからです。