発達栄養学104 エネルギー代謝の仕組みを知っておこう

重要なエネルギー源であるブドウ糖と脂肪酸を材料にしてエネルギー産生させるのは細胞の中にあるミトコンドリアです。ミトコンドリアは細胞内の小器官で、一つの細胞に100〜3000個ほど存在していて、その重量は体重の10%ほどにもなります。特に多く存在しているのは筋繊維(筋肉細胞)、肝細胞などです。それほどミトコンドリアは重要な器官であり、多くのエネルギーを作り出すことが必要になります。主としてミトコンドリアの中でエネルギー代謝が行われますが、ミトコンドリア以外でも一部のエネルギー代謝が起こっています。
ブドウ糖のエネルギー代謝には体内に取り込まれた酸素を使わないままエネルギーとする解糖系の代謝と、酸素を使う有酸素系の代謝の2つの系統があります。解糖系の代謝はミトコンドリアの中で、ブドウ糖は酵素の働きによってピルビン酸に変化して、その過程でエネルギー物質が発生します。この場合にはブドウ糖1分子当たり、2分子のエネルギー物質であるATP(アデノシン三リン酸)が発生します。
これに対して有酸素系の代謝では、ブドウ糖1分子当たり36分子のATPが発生します。ピルビン酸は酵素の働きによって補酵素のアセチルCoAに変換され、これがミトコンドリア内のTCA回路(Tricaboxcylic acid cycle)に入ります。TCA回路はミトコンドリア内で起こる9段階の代謝回路で、アセチルCoAはクエン酸に変化して、次々と別の酸に変換されていきます。
このエネルギー代謝を高めるためには、クエン酸が多く含まれる食品を摂ることが有効だとされるのは、TCA回路がクエン酸から始まることに関係しています。クエン酸が多く含まれるのは、柑橘類(みかん、オレンジ、グレープフルーツ、レモンなど)、梅干し、黒酢などです。
TCA回路では、それぞれの酸が酸素との反応によって次々と変化し、二酸化炭素を発生させたあと水と36分子のATPを発生させます。ATPは塩基のアデニンに糖のリボースが結合した形で、これにリン酸が3個結合しています。ATPからリン酸が1分子外れてADP(アデノシン二リン酸)になるときに生体の活動に必要なエネルギーが発生します。ADPはTCA回路でリン酸1個が結びついてATPに合成されます。
ATPは発生した細胞の中でのみ使われるもので、他の細胞に伝達されることがない、“地産地消”のような性質となっています。