野菜が苦手になる初めての要因として、離乳食で初めて味わった野菜の味について説明しましたが、離乳食から通常の食事へと移っていく段階でも野菜が食べられなくなる理由はいくつかあります。味覚の種類として五味の甘味、旨味、塩味、酸味、苦味があげられますが、このほかに渋味、辛味もあり、最近の研究では脂味まであることがわかってきました。
野菜の特有の味を感じにくくさせるには、離乳食ではすりつぶした野菜ペーストに甘味や旨味を加えて、これを食べているうちに酸味、苦味、渋味などにも慣らしていくという方法があります。
野菜は食べられないものの野菜ジュースなら飲める、野菜に果物がプラスされたジュースなら、もっと飲みやすいということがありますが、これは野菜に特有の味を抑えることによって慣れさせて、徐々に野菜そのものを食べられるようにする過程として使われています。これと同じ考えで、野菜は出汁(だし)を使って煮る、スープやシチューなどで野菜を食べる、場合によっては甘いジュースで野菜を煮るという方法もあります。
子どもが好きな甘味や旨味は母乳(調整粉乳)の味として身についたものですが、母乳は噛むことをしなくても甘味と旨味は感じられます。歯は生後6〜9か月で生え始めて、初めは前歯の下2本、次に前歯の上2本が生えるのが一般的です。この少ない歯だけでは離乳食から通常食に変わってきても、成人のようにしっかりと噛んで食べるというわけにはいきません。
しかし、噛むという行動は唾液を分泌させ、噛むことによって脳を刺激して、胃での消化も腸での吸収も進めてくれます。唾液が分泌されることによって炭水化物(ご飯など)もたんぱく質(肉や魚、卵など)も消化(分解)されて、食品に含まれている甘味、旨味が引き出されます。これによって乳幼児には苦手な味がある野菜も食べられるようになります。野菜が苦手、嫌い、食べられないという子どもは、噛むという行動をせずに、すぐに飲み込むことをしていたことが多いという研究報告もあります。