発達栄養学132 子どもの脂肪が多い食事の影響は生涯続く

「三つ子の魂百まで」という言葉があります。これは幼いころに体得した性格や性質は一生変わることがない、という意味で、実際に100年も変わらないということではなかったのです。しかし、現在の日本人の平均寿命(2019年)は男性が81.41歳、女性が87.45歳という長寿国で、しかも2020年には100歳以上が8万人を超えたことから、実際に「百まで」という状況にもなっています。
性格や性質だけではなく、子どものときに経験した味覚は、その人の人生を変えるほどの影響があります。2〜3歳で味わった経験から好き嫌いの嗜好が生まれてきて、甘味、塩味、脂味の感覚も身についてきます。脂味というのは、以前は味覚には含まれていなかったのですが、脂肪をおいしく感じる味覚で、子どものころに脂肪を多く摂っていると脂肪の味に敏感になり、脂肪が含まれているほどおいしく感じるようになります。
大人の場合には脂肪をおいしく感じる能力は世界に共通していますが、中でも欧米やアジア大陸で肉食が多い地域の民族では脂味感覚が鋭くなっています。これはエネルギー量が高い脂肪を多く摂って生き延びるために、そして脂肪が多い食品を食べられるようにするために自然と身につけられた能力と言われています。以前には日本人の脂味は鋭くなかったのですが、肉食が増えてきたことから脂肪をおいしく感じて、脂肪を自然と求めるように変わってきました。
この感覚は、一生涯続くので、子どものときに脂味が刺激されると、中学生以降はおいしいものを求めるときに脂肪が多い食品となりがちなので、脂肪の摂取量が影響する脂質異常症(高中性脂肪血症、高LDLコレステロール血症)のリスクが高まります。その影響によって発症する脳血管疾患(脳梗塞、脳出血など)、心疾患(心筋梗塞、狭心症など)の死につながる病気にもなりかねないということです。
以前の子どもはマグロのトロを食べても、おいしさを感じにくかったものですが、脂味が鍛えられたために、「脂が乗っていておいしい」などと小学校に通う前の段階で言い出すような状態になっているのです。