和食はユネスコの無形文化遺産に登録されていますが、これは日本人が食べている食事の味や健康度だけが評価されたものではありません。自然尊重と社会的慣習があり、以下の4つの特徴から認められたものです。
1 新鮮で多様な食材と素材を用いて、その持ち味を尊重する工夫が施されている点です。四季折々の海の幸、山の幸があり、これらを活かすために出汁(だし)を使用した調理法が発達したことがあげられます。
2 栄養バランスに優れた健康的な食生活を形成している点です。地域で採れるさまざまな自然食材を用いて、出汁の旨味を上手に使って、動物性の油脂が少ない独特の食生活を実現していることです。
3 食事の場において自然の美しさや季節の移り変わりを表現した盛り付け、提供が行われる点です。飾り包丁で自然を表現するなどの美意識が根底にあり、旬の食材を好んで用いるほか、季節に合った調度品や食器を利用することで季節感を楽しむ心が日本の食文化にあることです。
4 食が年中行事と密接な関わりを持っている点です。冠婚葬祭に食は重要な位置を占めています。正月のおせち料理、雑煮から始まり、大晦日の年越しそばまで、さまざまな年中行事に食は欠かせないものです。また、お食い初め、七五三などの人生の節目の儀礼にも食が密接な関わりを有していることがあげられます。
和食は、確かに世界に誇るべき文化ですが、日本人が以前に食べていた食事とは中身が異なり、肉食が増えたことが生活習慣病を増やしていることへの反省から、伝統食が見直されています。伝統食といっても“粗食”のことではありません。戦前の粗食の時代は生活習慣病は少なかったものの平均寿命は短くて、50歳に達したのは戦後の昭和22年のことです。そのことを忘れて、伝統食への回帰を叫ぶのは、どうかと思います。
日本人に不足していた動物性たんぱく質と脂肪が増えて、平均寿命が延びても生活習慣病がさほど多くなかった昭和30年代後半の食事を見習うべきではないでしょうか。