「いただきます」と学校給食で言う必要はない、ということを言い出す保護者がいます。給食費を払っていて、何も恵んでもらっているわけではない、という主張を聞いたことがあります。食べる前に「いただきます」と言うのは日本人くらいで、これに相当する言葉は欧米にはない、ということが言われます。世界中の食事に関する言葉を検証したわけではないのですが、誰に(どこに)向かって「いただきます」と言っているのかということは子どものときに教えておきたいことの一つです。
教育の場で教える公式見解としては、「私たちで生きていくために命をくれた動物や植物、手間をかけて収穫や栽培をしてくれた人たち、それを運んだり、料理をしてくれた人たちに対しての感謝の気持ち」の言葉が「いただきます」です。私たちが生きていくことができる環境を整えてくれた人たち、一歩進んで神様に感謝をするという説明がされることもあります。
以前には「米という字は分解すると八十八になる」と言われて、田植えから収穫まで88日かかる、88の手間がかかるということが道徳的に言われたものです。実際には田植えから収穫までは最短で90日、平均的には120日ですが、それほど違っていません。今では農業の機械化が進んで30ほどの手間になっています。それでも簡単なことではなく、天候にも左右されるので、大変な苦労の末に、おいしく食べることができるので、「一粒も粗末にしてはいけない」と言われて育ってきたのが以前の日本人でした。
それなのに食べられずに捨てられる食品は全国で年間約600万t(トン)、1人当たり約47kg、わかりやすく表現するために毎日お茶碗1杯分(130g)を捨てていると言われています。世界で飢餓に苦しむ人への食料援助量が年間420tであるので、日本だけで、その1.4倍もの食品ロスになっています。
だから、残さず食べろ、好き嫌いを言わずに食べろということを子どもたち、中でも発達障害で極端な偏食がある子どもに強要するつもりはありませんが、食べ物の重要性を認識して食べることだけは身につけてほしいのです。