食物繊維の量が多いほど咀嚼の回数は増えていきます。野菜の摂取量が少なく、咀嚼回数が少ない状態では、唾液の分泌量が減ります。充分に咀嚼することによって、胃での消化を助ける作用が得られます。
噛む回数が少なくなって唾液の量が不足すると、それだけ胃は多くの胃液(消化酵素)を分泌させないといけなくなることから胃にも余計な負担をかけることになります。
噛む回数の推移については、さまざまな報告がありますが、弥生時代の日本人は1回の食事で約4000回は噛んでいたといいます。
鎌倉時代には約2500回、江戸時代には約2000回になり、第二次世界大戦前には約1400回、食べるものが大きく変化した戦後には600回くらいになり、今では300回を下回る人も少なくありません。
噛むことのメリットについて多くの研究が重ねられていて、消化吸収の促進から虫歯の予防、生活習慣病や認知症の予防、免疫の強化など全身の健康に及んでいることがわかってきています。咀嚼して唾液が分泌されると、その連鎖反応として消化器官が働き始め、たんぱく質や脂質(脂肪)を分解する消化酵素が充分に分泌されるようになります。
消化酵素を直接的に多く分泌させることは難しくても、唾液は咀嚼によって分泌を進めることができるため、よく噛むことで消化吸収を全般的に高めていくことができるというわけです。
唾液の中には、リゾチームやラクトフェリンといった抗菌作用のある成分や唾液の消化酵素でもあるカタラーゼも含まれています。ラクトフェリンは鉄を含んだ糖たんぱく質で、腸内細菌の善玉菌を増やし、免疫を高める作用も認められています。
また、唾液には免疫の抗体の働きを強めて、発がん物質の働きを弱めるラクトペルオキシターゼという酵素も含まれています。さらに、唾液の消化酵素でもあるカタラーゼには活性酸素を消去する作用もあります。
活性酸素を消去するためには、30秒間は必要だといわれます。1回噛むのが1秒とすると一口について30回は噛むのが健康のためによいということがわかります。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕