学習障害170 発達性協調運動障害の視覚調整

発達性協調運動障害があると、視覚に頼りすぎるために、視覚を補う聴覚、触覚がうまく使えなくなります。視覚に頼る傾向が強いほど、手先の器用さを示す微細運動スキルが低下することが確認されています。
視覚に頼りすぎる原因になっているのは、目で捉えるときに眼球をスムーズに、素早く動かすことができないことから視覚で捉えられる情報が少なくなることから、しっかりと見るために、より集中することがあげられています。しっかりと見るために眼球を的確に動かせない場合には、動きが悪い分だけ頭を動かしてカバーするようになります。
視覚、聴覚、触覚をフルに活用して運動をするときには、頭の位置はできるだけ動かさないようにすることが大切になります。ところが、頭を動かしていると耳の位置が変わり、首から上だけでなく、上体も動くことになり、ボールを受ける、器具に触れて身体を動かす(跳び箱など)といったことに対して触覚が充分に使われないことになります。
こういったことを改善するためには、両方の眼球を動かして視野を広げるトレーニングが使われます。いわゆるビジョントレーニングと呼ばれる方法で、よく使われるのがナンバータッチトレーニングです。ホワイトボードや壁に1から20までの数字が書かれた紙をランダムに貼り、1から順番に触れていくようにします。このときに眼球の動きがよくないことを補うために頭を動かすことはさせないようにして、できるだけ正面を向いたままで眼球を動かして数字を探すようにします。そして、見つけた数字の紙にタッチします。
運動機能を高めるときには、できるだけ短い時間でこなすことが求められますが、発達性協調運動障害の改善のためには、ゆっくりでよいので眼球を大きく動かして、数字を見つけることから始めるようにします。そして、徐々に速度を上げていくようにします。見つけた数字をタッチすることが大切で、目の動きと手の動きを一致させる、つまり視覚と触覚の両方を使って、見えたものにタッチするようにします。
運動能力の向上のためには、広い範囲に数字を貼って、大きく身体を動かしながら見えたものをタッチする方法が行われますが、発達性協調運動障害の改善には足は動かさずに、手が届く範囲に限るようにします。手が届く範囲での視覚感覚を鍛えることによって、視覚と触覚が連動して動く反射能力を高めていくことができるようになります。