栄養学の基本は、それぞれの人に適したエネルギー量を確保することで、そのエネルギー量の単位となっているのは80kcalです。生活習慣病の予防と改善のために食事療法を実施するときには80kcal栄養学では、80kcalを1単位として計算します。
ご飯の量で80kcalというと重量にすると55gで、これはご飯茶碗に軽く半分の量になります。通常は、ご飯茶碗に1杯が基本とされるので、軽く1杯分で2単位となり、エネルギー量では160kcalとなります。パンの場合には6枚切りの半分の量が80kcalで、6枚切りを1枚食べた場合には2単位となります。
おかずでは、1単位の量を基本にして選択すると肉(牛肉、豚肉、鶏肉)は脂身を取り除いたもので60gとなります。魚は種類によって油の量が違い、当然のようにエネルギー量も違ってくるのですが、標準とされるのは1切れ(80g)で1単位となります。
牛乳は140mlが1単位で、通常の1本の量(200ml)では1.4単位となります。ヨーグルトの1単位は140gです。野菜は300gが1単位で、りんごだと150gの量となります。
詳しくは食品交換表に記載されていますが、この80kcalで1単位というのが、まずはわかりにくくなっています。なぜ80kcalが1単位なのかということについては、「日常の食事で使われる量がだいたい80kcalとなっているから」と説明されることが多いようです。しかし、実際に食べられている量を調べてみると80kcalに相当する分量はダイエットメニューに出てくる少なめの量で、しかも“80”という数字がわかりにくくなっています。
80、160、240、320、400と80ずつ増えていく倍数をスラスラと言える人は少ないはずです。これが半分の量のプラスとなると、もっと計算しにくいはずです。
これが100だったら、半分でも10分の1でも解散しやすいので、食事に使われる量が100kcalだったらよいのに、と考える人もいます。この声は栄養指導の場で指導される方から、よく聞かれることです。実は、この声のほうが正しい、ということを紹介させてもらいます。
日常の食事で食べられている食品のエネルギー量は、だいたいが100kcalになっています。それなのに、どうして80kcalが基本単位となっているかというと、これは今から75年前の終戦後の食糧難の時代に食事量が減り、一食あたりに食べている主食、主菜(肉、魚、卵など)の量が80kcal相当になっていたからです。
これを当時の糖尿病の学会が採用して、栄養教育にも採用されました。“戦後の緊急措置”であったはずのものが今も続いています。計算しにくく、理解しにくいことから80kcalを1単位としています。100kcalが基本なら単位は必要ないはずです。栄養指導がわかりにくいのは、脈々と続けられてきた80kcal栄養学のほうに原因があるのです。
100kcalを基準とした栄養学であれば、子どもたちも理解しやすく、将来に渡っての栄養摂取にも大きな利益とはるはずです。