発達障害では自律神経の調整が乱れやすいことが指摘されていて、その影響が便通に出やすくなっています。そこで食事によって便通を改善する方法として、食物繊維の摂取がすすめられています。食物繊維には種類があって、どれを多く食べるかによって腸の状態が変わってきます。食物繊維は、以前には消化も吸収もされないために役に立たないカスのような扱いをされてきましたが、さまざまな健康効果がわかり、糖質、脂質、たんぱく質、ビタミン、ミネラルに並ぶ第6の栄養素に数えられるようになっています。
食物繊維の摂取量を増やすというと、食物繊維が多く含まれる野菜の中でも根菜類(ニンジン、ゴボウ、レンコンなど)を食べようとする人が多いかと思います。厚生労働省が推奨する1日の食物繊維の量は男性が20g以上、女性が18g以上とされています。これは1955年(昭和30年)ころと同じ摂取量です。現在の食物繊維の摂取量は、国民健康・栄養調査(令和元年)をみると18.4g(男性19.4g、女性17.5g)となっていて、分量的には少し不足している程度となっています。
不足している人の場合には、野菜を多く食べればよいのかということですが、1日の野菜の摂取目標は350gです。現状の葉物類と根菜類は1955年ころと同じくらいの摂取量となっています。不足しているのは穀類、豆類、いも類、きのこ類、海藻類の食物繊維です。これらの食品の中でも、きのこ類、海藻類に豊富に含まれる水溶性食物繊維を増やすことを心がけるべきです。
食物繊維は消化も吸収もされない性質があるものですが、不溶性食物繊維と水溶性食物繊維に大きく分けられます。不溶性食物繊維は胃腸の中で変化しないもので、腸の掃除役となっています。
水溶性食物繊維は水を吸収して膨らみ、胃の中の糖質や脂質の一部を吸着して吸収を抑える働きがあります。腸内細菌の善玉菌の栄養源(エサ)となって発酵を進める作用は水溶性食物繊維にも不溶性食物繊維にもありますが、水溶性食物繊維のほうが善玉菌を増やしやすくなっています。
水溶性食物繊維には、ペクチン(果物の実と皮、野菜)、アルギン酸(こんぶ、わかめ)、グルコマンナン(こんにゃく芋)、βグルカン(きのこ)、ムチン(納豆、オクラ、里芋)などの種類があります。水溶性食物繊維には、水分を吸収することから便を軟らかくして、通過しやすくさせる働きがあります。
不溶性食物繊維は、セルロース(穀類、豆類、野菜)、ヘミセルロース(穀類、豆類、野菜、海藻)、ペクチン(野菜、果物)、リグニン(豆類、穀類のふすま、野菜、ココア)、イヌリン(ごぼう、ゆり根、きくいも)、キチン(カニやエビの殻)などの種類があります。腸を刺激して蠕動運動を起こし腸の中のものを先へと送る働きがあり、排出を促進します。

