マラソンでは途中で水分補給をしていますが、このときに飲んでいるのは水ではなくて、ブドウ糖などの糖分を溶かしたものが使われています。これは糖分を途中で摂ることによって、脂肪の代謝を進めて、大きなエネルギーを作り出すために行われていることです。運動をして疲れてきたときにスポーツドリンクを飲むと気力、体力が甦ってくるのは、すぐにエネルギーになるブドウ糖が多く含まれています。
運動の途中では効果のあるブドウ糖の摂取も、運動前に摂ると逆効果にもなりかねません。運動をすると初めの10〜15分間はブドウ糖が主に代謝で使われていて、それを過ぎると脂肪酸が主に代謝に使われるようになります。これはブドウ糖が適度な量の場合の話で、ブドウ糖が少なくなってくることで脂肪酸の代謝に変化します。ところが、ブドウ糖を摂りすぎて血糖値が高い状態で運動をすると、なかなか血液中のブドウ糖が減らなくなり、脂肪酸の代謝に切り替わらなくなります。そのために、エネルギーが急に切れたような状態になってしまうのです。
では、ブドウ糖は摂らないほうがよいのかというと、足りない状態では、やはり脂肪酸の代謝が起こりにくくなります。血液中のブドウ糖は“導火線”のようなものだと考えられています。ブドウ糖は先にエネルギー化しやすいので、火をつけたらすぐに燃える紙のようなものです。それに対して脂肪酸は木のようなもので、木にマッチの火を近づけても燃えてはくれません。ところが、紙を燃やすと、木に火が移って、その木は長く燃え続けてくれます。
ブドウ糖は細胞のミトコンドリアで代謝が起こることによってエネルギーが作り出されます。ミトコンドリアの数は細胞によって違いがあり、筋肉細胞には1個の中に3000個ほどのミトコンドリアが存在しています。すべてのミトコンドリアを合わせると体重の10%ほどにもなります。
ブドウ糖の代謝によって得られたエネルギーを使って、細胞は脂肪酸を取り込んで、その脂肪酸がミトコンドリアに取り込まれて、代謝が起こります。この仕組みからいっても、適当な量のブドウ糖がなければ、脂肪酸が代謝しにくいことになります。脂肪酸の代謝が盛んに行われるのは運動をしているとき以外では、活動的な昼間の時間帯です。この時間帯に代謝をより盛んにするためには、朝食でブドウ糖が含まれた糖質を摂ることが大切であり、朝食を抜いたり、朝食時間に飲み物しか摂らないようなことをしてはいけないということです。