腸の健康を考えるときに、必ずといってよいほど出てくるのが、腸内細菌を腸の中に届けることと、腸内細菌のための栄養を与えることの、どちらを優先させたほうがよいか、ということです。
腸内細菌の善玉菌と同じ働きをするものを食品や飲料として摂ることはプロバイオティクス(probiotics)と呼ばれます。善玉菌の代表であるビフィズス菌などは腸内では1〜2日しか生きられないため、善玉菌を摂っても意味がないという考えをする人がいます。腸内には1000兆個もの腸内細菌がいて、そのうちの20%ほどが善玉菌だと考えられています。悪玉菌が10%、日和見菌が70%の割合が最も腸内のバランスがよいとされています。200兆個の善玉菌に対して、1回で100億個の善玉菌が含まれるサプリメントなどを摂っても、わずかな量にしかなりません。
そこで腸内のビフィズス菌の栄養源となるオリゴ糖を摂るプレバイオティクス(prebiotics)を優先させるべきだという考えもあります。どちらがよいのかを考えることは腸内細菌を理解するにはよいことではあるものの、両方の方法に腸内環境を整える意味があります。
ヨーグルトなどでビフィズス菌を摂っても定着しないとしても、腸内で生存している間に腸内を酸性化させて、もともと腸内に棲息している善玉菌が増えやすい酸性の環境にすることができます。プレバイオティクスでは、腸内に生息する善玉菌と飲食で摂った善玉菌を増やすことができます。プロバイオティクスとプレバイオティクスの両方を一緒に行うことはシンバイオティクス(synbiotics)と呼ばれています。
プロバイオティクスは1989年のイギリスの微生物学者のフラー博士によって提唱された考えで、プレバイオティクスは1995年にイギリスの微生物学者のギブソン博士によって提唱された考えです。プロバイオティクスに対して、前を示すプレ(pre)からプレバイオティクスと名付けられました。シンバイオティクスは「一緒に」を示すsynから名付けられたもので、1995年にギブソン博士によって提唱されました。