血糖値が高い人は、ブドウ糖が含まれる糖質を減らすことで血糖値を抑えることができますが、糖質制限をしている人の中には、かえって血糖値が上昇して、太りやすくなることがあります。糖質制限をすると、糖質(炭水化物)を減らした分だけ、肉を多く食べるようになりがちです。肉に多く含まれるたんぱく質にも脂肪にも直接的に血糖値を上昇させることはありません。血糖は血液中のブドウ糖のことで、ブドウ糖の量が少なければ血糖値は上昇しないというのが普通の感覚です。
血糖値が上昇すると、それに反応して膵臓からインスリンという血糖値を下げる作用がある唯一のホルモンが分泌されます。このインスリンを使って、血液中のブドウ糖が細胞に取り込まれています。インスリンの働きは、これだけではなくて、血液中の中性脂肪が多くなったときにも多く分泌されます。インスリンには肝臓で中性脂肪を合成する働きがあります。糖質を多く摂っても太るのは、この中性脂肪の合成が関係しています。
また、インスリンには中性脂肪を脂肪細胞の中に蓄積させる働きもあります。インスリンが多く分泌されると、食事で摂った中性脂肪と肝臓で合成された中性脂肪が脂肪細胞の中に蓄積されていきます。
欧米人や北方のアジア人(中国やモンゴルなど)は、脂肪が多い食事を歴史的に続けてきたので、中性脂肪を多く蓄積させるためにインスリンが多く分泌されます。そのために肉を通常よりも多く食べたからといっても膵臓が疲弊するようなことはなくて、必要なだけのインスリンを分泌させることができます。それに対して日本人は、歴史的には肉の摂取量は少なく、ご飯にしてもそれほど多くは食べてこなかったので、インスリンを多く分泌させる必要はありませんでした。
そんな体質の日本人が肉食を多くすると、インスリンが多く必要になり、膵臓が働き続けることになって、それが長く続くと膵臓は疲弊してインスリンの分泌が急に減るようになります。その状態が糖尿病の始まりで、日本人は脂肪の摂りすぎでも糖尿病になるという極めて珍しい体質の国民なのです。