発達栄養学85 生理前に便秘になる理由

食物繊維は腸壁を刺激して便通をよくするものとして知られていますが、積極的に食物繊維を摂っても便通が悪いということがあります。女性の場合は、生理前には食生活に関係なく、便秘になる可能性が高くなっています。
便秘になる原因は女性ホルモンの変化です。排卵から生理が始まる前には女性ホルモンのプロゲステロン(黄体ホルモン)の分泌量が増えます。これは妊娠を保持するためのホルモンですが、大腸の蠕動運動を低下させる作用があります。大きく蠕動運動が低下するものではなくて、腸内環境がよい人、つまり腸内細菌の善玉菌が多く、悪玉菌が少ない人の場合には、それほど影響が出ないこともあります。それに対して、あまり腸内細菌がよくない人の場合には、蠕動運動の低下は、すぐに便秘につながることになります。
大腸は便の水分を吸収していますが、生理前には大腸の水分吸収が増えます。そのために生理前にはむくむという人も少なくないのですが、これは大腸からの水分吸収量が増えて、それが体内で保持されることから起こっていることです。水分吸収量の増加と蠕動運動の低下が加わると大腸にとどまる時間が長くなり、水分量が減ることになって硬くなり、出にくい状態になってしまうわけです。
生理が始まったときにはプロゲステロンの分泌量が減って、代わりにエストロゲン(卵胞ホルモン)が多く分泌されます。この女性ホルモンは子宮を収縮させる作用とともに、大腸の蠕動運動を盛んにする作用もあることから、便秘が解消されるようになります。
便秘は蠕動運動と水分量だけが影響するものではなくて、最も影響を与えているのは腸内細菌のバランスです。善玉菌には便を発酵させることによって量を増やして軟らかくする作用があります。悪玉菌には便を腐敗させて硬くする作用があります。善玉菌の栄養源(エサ)となっているのは糖質、乳製品、食物繊維で、悪玉菌の栄養源となっているのは動物性たんぱく質と脂肪です。このことからわかるのは、肉食が多いと便秘になりやすく、ご飯や野菜の割合を増やすと便秘になりにくいということです。