脂肪は健康維持には悪いもののように言われることがありますが、食品に含まれる成分に善も悪もありません。必要なものであっても、摂りすぎると弊害が出ることがあります。脂肪はエネルギー源としては必要なもので、1gあたり約9kcalと、糖質とたんぱく質の約4kcalに比べると2倍以上のエネルギー量があります。エネルギー源を効果的に取り入れるためには脂肪は有効なもので、体内で余分となった糖質やたんぱく質が肝臓で脂肪に合成されるのは、効果的なエネルギー源として蓄積するための仕組みです。
脂肪の摂りすぎを避けるために、脂肪が少ない肉を選び、脂肪が多い部位を切り落として料理をする人もいます。これは見える脂肪を減らすための方法ですが、問題とされるのは見えない脂肪のほうです。厚生労働省の「国民健康・栄養調査」の結果を見ると、1日あたりの脂質摂取量は55gほどですが、そのうち40gは見えない油となっています。料理をする人、食べる人は意識をして減らすようにしていても、実際には見えない油を多く摂っているというのが実情です。
見える油というのは、動物性脂肪ではラード(豚油)やヘット(牛脂)、魚油、バターなどを指しています。植物性脂肪はサラダ油、ごま油、オリーブオイル、マーガリンなどです。この他に調味に使われる油としてドレッシング、マヨネーズ、ラー油、鶏油などがあげられます。
これに対して、見えない油というのは、一つは食材に含まれている油のことで、肉の赤身や白身、魚、卵、牛乳、乳製品、種実(ごま、ナッツ類など)などがあげられます。もう一つは食材が吸っている油で、揚げ物や油揚げなどの食材には多くの油が含まれています。加工食品も脂肪が多く、ベーコンやソーセージ、ウインナーなどの肉の加工品のほかに、カレーやラーメン(特にインスタントラーメン)にも多くの油が含まれています。菓子類やパンにも思った以上に油が多く、中でもスナック菓子、ケーキ、クロワッサンやデニッシュなどのパンも油の摂りすぎになるので注意が必要です。
これに対して、積極的に摂りたい油としてあげられているのがn–3(オメガ3)系不飽和脂肪酸で、エゴマ油、アマニ油、青背魚(サンマやマグロ、カツオ、ブリなど)の魚油です。体内では合成されないために食品から摂らなければならない必須脂肪酸で、血液中の中性脂肪や、悪玉コレステロールとも呼ばれるLDLコレステロールの減少、アレルギーの緩和などの作用が認められています。