脂肪は油脂とも呼ばれています。油脂は常温で固体の脂肪と、常温で液体の脂肪を合わせたもので、動物性脂肪は一般には“脂”、動物性脂肪の中でも魚油と植物性脂肪は“油”と表現されています。一般に脂肪と呼ばれているのは中性脂肪で、1分子のグリセロールが3分子の脂肪酸を結びついた形になっています。中性脂肪の“中性”は、酸性、中性、アルカリ性の中性には関係がなくて、英語のトリグリセリド(Triglyceride)を和訳したものです。
脂肪酸には飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸があり、飽和脂肪酸は一般には常温では固形で、動物性脂肪に多く含まれています。パルチミン酸、ステアリン酸などがあります。不飽和脂肪酸は常温では液状で、植物油や魚油に多く含まれています。オレイン酸、リノール酸、α–リノレン酸などがあり、リノール酸やα–リノレン酸は体内では合成されないために食品から摂らなければならない必須脂肪酸となっています。
飽和脂肪酸は血液温度が高い動物の脂肪に多く含まれていることから、動物よりも血液温度が低い人間の血液中では固まりやすくなっています。これに対して不飽和脂肪酸は常温でも溶けているので、温かな血液中ではもっと溶けやすくなります。鶏や豚、牛に触れると温かいのは血液温度が高いからで、魚は水の中で棲息しているので血液温度が低くなっています。この温度差だけでも感覚的にわかります。
このことで明らかなのは、動物性脂肪を多く摂ると血液がドロドロになりやすく、血流が低下するということで、それとは逆に植物性脂肪や魚油を多く摂ると血液がサラサラになりやすく、血流が促進するということです。ちなみに脂肪酸の摂取バランスでいうと、厚生労働省の「日本人の食事摂取基準」では脂肪酸は全エネルギー量のうち20〜30%とされていますが、そのうち飽和脂肪酸は7%以下にすることが推奨されています。