エネルギー源(ブドウ糖、脂肪酸、アミノ酸)のうち脳細胞だけはブドウ糖しかエネルギー源にならないと前回紹介しました。それは脳細胞に取り込まれているのにエネルギー源とならないわけではなくて、脳細胞にブドウ糖が到達しないからです。
脳には血液脳関門というゲートがあり、そのバリア機能によって脳に必要な成分は通過させ、不要なものや有害なものは通過させないようにしています。エネルギー源のうち、血液脳関門を通過できるのはブドウ糖に限られています。そのため、ブドウ糖は“脳の唯一のエネルギー源”と呼ばれています。
ブドウ糖以外では特異的にケトン体は血液脳関門を通過して、脳に取り込まれてエネルギー化されます。ケトン体は脂肪の合成や分解で発生する中間代謝産物で、ブドウ糖が不足したときにエネルギー源として使われます。
そのため、ブドウ糖が含まれる糖質が不足しても、脳の機能が停止するようなことはありません。この仕組みがあることから、糖質制限をしても脳機能に影響はないとする専門家もいるものの、ケトン体が脳で使われるのは飢餓状態などの危機的な状態に対応するための仕組みであるので、これを頼りにすることはあってはいけないことです。
ブドウ糖が脳機能を充分に発揮させることができる保持時間は15時間ほどとされています。朝食と夕食で糖質を摂取した場合には脳の機能が低下することはないものの、3食のうち朝食か夕食を抜くようなことをした場合には15時間を超えて、脳機能が低下することになります。
記憶力や集中力に影響が出るだけではなく、脳は全身の働きをコントロールしています。短期間では影響は出にくくてもブドウ糖が不足した状態が長年続くと、全身に影響が出てくるのは当然のことといえます。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕