発達栄養講習33 ダイエットをする女性の栄養感覚

子どもの食事内容と栄養摂取には、母親の食事が大きく影響します。それは二つの意味があります。一つは、妊娠前から妊娠中の栄養摂取に関わることで、母体の栄養摂取の結果が子どもにも影響を与えることです。健康維持のために必要な栄養が不足した状態では、正常な成長が望めなくなるからです。

もう一つは、出産後の母乳からの栄養摂取に関わることで、母乳は血液が乳腺の中で変化したもので、その栄養内容は血液中の栄養、つまり母親が食べたものに大きく影響されています。食べたものの影響を受けるのは、間接的に栄養摂取をする子ども(赤ちゃん)も同じことがいえます。
以前に臨床栄養の仕事の関連で、“未来のお母さん栄養調査”を実施したことがあります。実施のためのサポーターは栄養食品を製造する大手食品メーカーで、調査対処者は女子大生でした。

初めは一般の女子大生だけを対象とした調査の予定でしたが、栄養知識がある女性も加えたほうがよいということになり、栄養学科がある大学での調査も実施しました。全体の調査結果が得られてから、栄養の知識の有無による生じる食事内容を比較する予定でした。しかし、最終的には違った比較をすることになりました。それはダイエットの実践の有無で、その調査のときに私の出番がありました。

将来は栄養士となって栄養に関する仕事をしようという女子大生は、栄養の基礎的な知識が一般とは異なっていると想定されていました。大学で学ぶだけでなく、子どものときからの環境が栄養の知識を深めることになっていると考えられたからです。

ところが、調査を実施してみたところ、栄養学を学んでいる女子大生は幼いときから栄養への関心があるということは特にはなくて、大学生になって栄養の重要性を学ぶようになってからも自身の栄養摂取については特に高い関心があるわけではないことが、調査の結果からわかりました。
個別に見ると違いの差は大きく、何が影響をしているのかを知るために追加調査が行われました。それがダイエットへの関心と実際のダイエット実施についてで、ダイエットに取り組んできた女子大生は栄養知識への関心が高いのかと思ったら、逆の結果でした。

ダイエット(この場合は“やせる”)という関心事が、食事量を減らす、無理をしてもやせたいという要望のほうが優先されて、肝心な栄養知識は、かえって低いことが明らかにされました。

こういった傾向が、母親になってからの子どもへの影響につながることの懸念があり、これが発達栄養の研究の基盤の一つにもなっています。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕