包丁は、よく切れるものを使うのが安全のための重要な条件となります。切れにくいものだと余計な力を使うことになり、そのための刃先の使い方がうまくいかず、食材を上手に切ることができず、指先を傷つけるようなことにもなります。
そのため、よく切れる包丁で、よく切れる使い方を教えることが大切になるのですが、そのように教えている教室で、固いものを力ずくで押し切りするように教えているということがありました。
病院調理師の技術と知識の講習を日本病院調理師協会で始めたばかりのときに、その講習実施の担当をしていたことがあり、「調理を科学する」とのテーマで顕微鏡を使った講習も実施していました。
調理に顕微鏡の画像というのは違和感も抱かれたのですが、実際に受講した病院調理師からは最も人気を得ていました。調理師が持参した自慢の包丁は、一見すると刀のような状態で、そのまま刃を食材に入れれば、一刀両断のようになるはず、との感覚でした。
ところが、顕微鏡で見てみると、真っ直ぐな刃になっていると思われたところがギザギザで、まるで鋸(のこぎり)の刃のようになっていることがわかります。鋸は前後に押し引きすることで切ることができます。片刃は引くときに切れるように歯が切ってあります。両刃は押すときにも引くときにも切れるように2種類の刃が組み合わされています。
包丁の刃の断面は一定方向ではなく、押したり引いたりしないと切れない状態になっています。だから、切りにくいもの、固いものを切るときには、鋸と同じような使い方をする必要があるわけです。
食べるものを作る料理に限らず、最もよい方法、うまく進めることができる方法があり、それには理由があるということを伝えるために、包丁の断面の話をしています。この話を聞いた子どもは、さまざまなことへの応用を考えるようになるのに、なぜか保護者は料理のほうに力を入れるということが多いのですが、どちらにしても真実を知ることは子どもの発達の推進のためには大切なことだということです。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕