発達障害児の保護者が、その経験を伝えて、多くの保護者に役立ってほしいということを言われるのは素晴らしいことだと思っています。その思いが、私たちが進める発達障害児の理解と地域的な支援、発達障害の改善に栄養面で取り組もうという推進を担ってもらえているのも心強いことです。
保護者として経験したことには限りがあるので、もっと勉強をして、少しでも子どもの発達障害の改善、社会的障壁への対応に役立てようとされている方もいます。そのような存在が増えてきているのも講習を開催していると実感させられます。
それはよいことではあっても、学べば学ぶほどよい結果が得られるとばかりに、家庭での子どもの対応の時間を減らしてでも、家族の役割の時間を減らしてでも学びに時間をかけるという保護者が少なからずいるのは事実です。その多くは、接する機会が多い母親です。
発達栄養に関して話をしていて、全般的に発達障害を理解して、それに栄養が関わること、食事の改善によって、どこまでアプローチをすることができるのかを理解しようと一生懸命になって学ぼうとする姿勢は有難いことではあるのですが、その学ぶのと同時に実践してもらうことが大切です。
学んだことを活かすためには、「トライアル・アンド・エラー」(trial and error)が必要です。一般には“トライ・アンド・エラー”と言われて、試行錯誤を表しています。実際に食事面でのアプローチをしているから重要性を学ぶことができて、学んだことを実際にやってみて、思っていたことと実際の結果の差を感じたら、また学んで、さらに実践するということの繰り返しによって、実績を重ねていくことができます。
ところが、学ぶのに時間がかかるからという理由で、子どもにかける時間が削られているという例もあります。学ぶ姿勢がある方には、できるだけ全体像を伝えたいという気持ちがありながらも、最も重要な子どもの食事面での直接的な改善にかける時間を削るようなことではいけないはずです。
だから、発達栄養の講習は、学ぶ方の都合や要望を優先させて、教えたいことではなくて、優先させて知りたいことから、限りのある時間の中で伝えられるようにしています。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕