発達栄養は発達障害児の成長と改善のための栄養摂取だけでなく、発育途中にある子どもたちの誰にも関わる栄養摂取の話だということを講習などで伝えると、理解が進むどころか、かえって学ぶ気持ちに水を差すことになるというシーンもあります。
発達障害児は特別な条件下で誕生していて、定型発達(発達障害がない)の子どもと根本的な違いがあります。その根本的な違いを改善するために、特別な方法を実施しなければならない、その特別な方法を教えるというと期待感は高まるでしょう。
そのような謳い文句で改善法を教えている“専門家”もいます。特別な方法だけでなければ改善はできないということであるなら、それを受け入れることで改善もついてくることになるでしょう。しかし、発達障害の改善につながる栄養に関しては、特別な方法、特別な医薬品、特別な栄養素という、他の子どもには必要がないということではありません。
当たり前に食べて、消化、吸収、循環、代謝が行われることが、うまくいっていないことから起こることが多いことから、対処法には当たり前の方法も使われます。あまりに当たり前のことなのですが、それが実施されていない実情があり、それが発達障害の改善を難しくさせることになり、さらに発達障害の状態を重くさせることにもつながっています。
発達障害があると神経伝達物質のセロトニンが少なく、そのために通常の神経伝達が起こりにくくなり、これが発達障害の改善にブレーキをかけることになります。
セロトニンは必須アミノ酸のトリプトファンを材料にして、ビタミンB₆によって体内で合成されます。トリプトファンは良質なたんぱく質と呼ばれる肉、魚、卵、乳製品などに多く含まれることから、通常の食事では不足することはないと考えられています。ビタミンB₆も肉、魚、卵、乳製品などに多く含まれています。
それならば普通の食事をしていればセロトニンが不足することはないと考えられがちですが、発達障害では、その合成能力が低くなっています。
体内のセロトニンの量は10mgほどとされていますが、そのうちの90%ほどは腸内に存在しています。腸内で多くが合成されるので、腸の状態をよくしないといけないのに、腸内環境を悪くする悪玉菌を増やす栄養源となるのが動物性たんぱく質と脂肪です。
この状況を改善する能力は人間には備わっているものの、その能力が発達障害では低いために、当たり前の食事であっても、当たり前でない対応が必要になってくるのです。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕